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韓国大統領選挙の結果は、何を語っているか?

 

 

 

○ 参与政府の与党は、どうして敗北したか?

 

○ “次善の選択”(イ・ミョンパクの当選)は、更なる市場主義によって、韓国民衆の犠牲を拡大する

 

 

韓国・大統領選挙は、軍事政権時代の政権与党である、ハンナラ党の党内候補、イ・ミョンパク(李明博)が、50l近い得票率で勝利した。87年軍事政権を葬り6月抗争を戦った市民の政権を自称する、‘参与政権’の与党は、国民の支持を得られず敗退した。キム・デジュンからノ・テウにいたる、韓国のメディアの言う「民主化勢力」の10年間は、08年2月25日には、「産業化勢力(軍政与党)」に取って代わることと為る。

与党、ヨルリンウリ党の後継政党である大統合民主新党のチョン・ドンヨン(鄭東泳)は、自ら参与政府の閣僚出身として、5年間の政権与党の「失政」の責任を問われたのだ。

 

韓国保険社会研究院は、参与政府5年間に、「貧困層(平均所得の50l)が11・5%から20・1%になり、非正規労働者は、820万人(就労労働者の50l)に増え、健康保険から排除された労働者は、350万人に達する」と報告。キム・デジュンは、経済政策において、‘経済独裁大統領’キム・ヨンサムを引継ぎ、1997年の国際通貨危機による外貨の流出で、IMFからの500億jの融資と引き換えに解雇条件の緩和や非正規雇用の増大に道を開く、労働法の改正など、資本の危機を「規制緩和」と「構造改革」により、労働者階級の犠牲で乗り切ろうとした。 087年6月民主化抗争の勝利の成果を受容できなかった労働者の諸権利は、更に民主化政府によっても蹂躙されたのである。

 

キム・デジュンとその後継、ノ・ムヒョンの参与政府が、福祉の重視と、富の社会的偏重を批判してきたのは事実だが、新自由主義路線の受容と労働の利害よりも資本の立場を重視してきたことが、今日の情況を生み出した。また、ノ・ムヒョンのサムソン財閥との癒着は、労働者の階級的立場に立つことが出来ない形式的民主主義者の必然的な帰結ともいえる。ノ・大統領も、イ候補者も道徳的品性において変わらないと言う韓国民衆の声が聞こえてくる。

 

しかし、だからといって、韓国民衆が直面する貧困層の増大と社会の二極化を生み出している、まさにその社会的根源である、韓国の産業化勢力・資本家階級の利害代表者でもあるイ・ミョンパクが、民衆の護民官気取りで、与党の経済政策の「失政」と「社会の二極化」を批判するのも欺瞞というべきである。しかも、かれは、特別検察官によって、二つの事件に対する犯罪嫌疑の対象となっていながら、大統領選挙に臨んだ。確たる事実を突きつけられた疑惑まみれのイ・ミョンパクで、「次善の選択」をしなければならなかった事は、韓国民衆の悲劇と言うべきだ。投票率が史上最低だった原因もここにある。

 

当然なことだが、参与政府は、右からも左からも批判が集中した。

 

韓国民衆の人権と政治的自由を、拷問と死刑で抑圧してきた軍政40年の歴史犯罪を、国家の責任において追求してきた参与政府の功績は評価しなければならないし、更に、キム・デジュンの後を引き継いで、朝鮮半島と東北アジアの平和構築に対するノ・ムヒョンの努力はおおきいが、韓国労働者民衆の生存の危機を蔑ろにした「朝鮮半島の平和」は、見せ掛けの平和にすぎない。

 

一方、ハンナラを初めとする韓国の右派軍政与党勢力は、一貫して、軍事政権の過去史の総括を批判してきたが、イ・ミョンパクの登場が、それを加速するとしたら歴史の逆行となる。韓国民衆言論<チャムセサン>は、「87年以降、労働者・民衆が血と汗で掘り起こしてきた民主主義的空間の解体が進んでいる」(別掲チャムセサン)と指摘するが、ノ・ムヒョン参与政権は、この5年間で労働者民衆の生存に対する資本の横暴を糾弾する義務を放棄した。また、韓国憲法と労働法上に超然と立ち、労働者と民衆の諸権利を余計なものとする人権否定法、<国家保安法>の廃棄の公約を踏み躙った。<国家保安法>を、民衆支配の超法規的道具として行使することに慣らされてきたハンナラ軍政与党と産業化勢力は、これを更なる「民主主義的解体」の道具として利用するかもしれないのだ。

 

20日、韓国の多くの市民団体が、イ・ミョンパクの当選が、彼の犯罪嫌疑に対する「免罪符」となることは許されないと、検察と特検の捜査継続を訴えている。軍政与党を基盤とし、悪質な経済犯罪者(株価操作、土地売買疑惑)でもある権力者の出現は、東北アジアの平和、にとっても決して許されるものではない。事態がどのように展開するか、特検の捜査は08年2月25日まで続く。その推移によって、事態がどっちに転んでも、韓国と極東アジアの社会的激動は当分続くであろう。

 

韓国の民衆言論チャムセサンは、別掲<参与政府を継承する実用政府>の論考で、イ・ミョンパクが、新政権を“資本権力への従属性の深化へ進む権力”と分析し、この権力への抵抗が、民衆の新しい政治を作り出すと主張するのは、全く同感である。