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社会主義革命の展望シリーズ-第1段

     

 

(韓国民衆言論 チャムセサン 2008年2月14日付)

http://www.newscham.net/news/view.php?board=news&nid=46378


 

(韓国において、明確な階級的性格を持った社会主義的階級政党の模索が行われている。北の民族的社会主義タイプではなく、国際主義に基く労働者民衆の権力による社会主義が、韓国社会の矛盾を解決する道だと主張している・訳注)                  



 “階級政党の建設が至急”対、“現場の実践が先”

 

 

 

キム・セギュン(金世均)教授(ソウル大)など14人、討論集会、変革政党模索の討論会

 

 

キム・セギュン、ソウル大教授など左派性向の研究者と活動家14人で構成された変革的進歩政党の討論集会(変革政党討論集会)が13日、《変革的進歩政党の必要性と基本性》を主題に討論会を開いた。討論集会が提案した“改革的自由主義や民族主義、社民主義と区分される、明確な階級的性格を備えた政党”を模索する為に、進歩政党と政治組織の活動家らが集まった。

 

 

討論者らは、変革政党建設の必要性に対して共感帯を形成しながらも、政党の・・推進の道筋に対しては、めったに意見の一致に至ることが出来なかった。

この日、キム・セギュン教授の提案でパク・ソンイン・“労働者の力”中央執行委員長、パク・チュンソン・社会主義労働者連合(準)活動家、ソン・デュヒョン・解放連帯(準)代表、オ・ジュンホ韓国社会党職務代行、イム・ピルス社会進歩連帯執行委員長が討論に立った。

 

 

 

キム・セギュン、“社会主義的階級政党の建設が至急だ”

 

(独占資本部門の社会化と、労働者権力の性格を持った民衆権力の創出)

 

 

 

キム・セギュン教授は、“今日左派運動は、党建設、連帯戦線の再編、労組運動の現実、大衆闘争の活性化など多くの課題に直面しているが、党の不在は、左派運動が当面する諸般の課題を社会変革のための総体的観点で対処することを妨げている。”とし、“こんな桎梏から抜け出て、左派運動が直面する諸般の時代的課題に能動的に対処して、総体的観点から社会変革運動を展開する為にも、党建設が至急だ。

 

 

また、“大統領選挙惨敗を契機として、進歩運動の革新と急進化を願う民主労働党の平党員らの要求が噴出する中で、大衆の社会主義的―社会主義の志(指)向的熱望が現れている”とし、“大衆の社会主義的ー社会主義の志向的熱望が、民族主義や社会主義をリップサービスの次元で提供する社民主義によって再捕獲されることを防ぐ為にも、社会主義的階級政党の建設は至急だ。”と伝えた。

 

 

キム・セギュン教授は“社会変革のための綱領が社会主義的変革を担保するものであるのかを判別する‘最小’基準は、社会主義的変革の物質的土台を提供し、利潤生産でなく必要充足を目標にする社会主義的計画経済体制の、樹立と拡張の基盤となることが出来る独占資本部門の社会化、”と共に、“究極的に労働者権力の性格を備えた(持った)民衆権力の創出を認めるかどうかの可否にある。”と明らかにした。

 

 

続いて、“労働者ー民衆権力の創出の道は、与えられた現実的条件と作られた情勢と、階級的歴関係に従って多様となるであろうが、どんな道を行こうと、ブルジョア国家装置の全面的な改組と労働者階級の全社会的ヘゲモニーの確保、更に人民主権機構で変革政党の民主的指導力の確保などが要求される”と、付け加えた。

 

 

キム・セギュン教授は、変革政党において、議会主義、代理主義の政党に対する対当概念である‘非制度的−社会運動的闘争政党’を提示して、これ等の為に“大衆政治からの議会政治の自立化(議会主義)と、大衆政治の議会政治への従属(代理主義)を食い止める事が出来る、確固たる党的牽制政治が用意されねばならず、議会活動にたいする徹底した党的統制がなされなければならない。”と語った。

 

 

 

変革政党の指向‘二重権力’が争点

 

 

キム・セギュン教授は、‘ブルジョア国家権力から、労働者―民衆への権力の移行過程が明確でなく議会主義に傾むく憂慮がある’というパク・ジュンソン活動家(社会主義労働者連合)の指摘に、“選挙を通して執権すれば、国家政治は相変わらずブルジョアのものであるが、国家権力は民衆にある二重権力の状態”(労働者民衆の評議会が一方の権力として形成される必要があると言うこと・・訳注)だと、移行段階に対する構想を明らかにした。

 

 

続いて、“社会主義の移行の経路は、一つの道が決められているのではなく、与えられた政治的条件と社会的階級関係に沿って、多様に模索することが出来る。”と同時に、“労働者の蜂起を通した、国家権力の転覆も不可能な方法ではないが、世界の歴史を見極めてみると、政治的民主主義を完全に迂回する方式は、多くの限界を持っている。”と伝えた。

 

 

これに、パク・ジュンソン活動家(社会主義労働者連合)は、“選挙を通じた二重権力達成の可能性は、あまりなく、大部分失敗した。”と言い切って、“本年の大統領選挙で、民主労総の階級投票の戦略が失敗したことで見るように、階級闘争のない階級投票が可能なのか、日常的な階級闘争が活性化されなければ、選挙を通した執権が不可能だ。”と反駁した。かれは、“古典的モデルである、労働の現場を中心に、一地域単位の労働者評議会、ソビエト(1917年ロシア10月革命に於けるプロレタリア権力組織《、労働者・農民・兵士評議会》を指す。・・・訳注)、を指向する。”と明らかにした。

 

 

彼は、そうであるが“議会戦術に対して根本的に否定することはない。議会主議にそれる可能性は、政党が活動の基調をどこに措くのかで決まると見る。民主労働党は、民主労聡の支持を受けていたが、選挙区中心の活動をしたために議会主義政党に転落した。と主張した。

 

 

ソン・デュヒョン(解放連帯)代表は、“大衆の蜂起が起こることを漠然と考えながら実践をして行けば、両方向すべてが失敗する。”とし、“それと同じ形態で歴史が進行される可能性は、相当に低く、観念的である考えにすぎない。”とパク・ジュンソン活動家を批判した。

 

 

 

労働者の力、‘左派政治のテーブル’提案・・・その他の団体は否定的

 

 

パク・ソンイン(労働者の力)中央執行委員長は、キム・セギュン教授に積極同意し、“08年に変革政党を論議する事としたのは、民主労働党分党(07年大統領選挙の敗北の総括を巡って、現在、<自主派>と<平等派>による深刻な党分裂が始まったことを指す。−訳注)事態が、契機となったこともあるが、今は、社会主義の政治勢力が20余年間の活動の成果として、党建設に対して憤激的な推進に出るときだ。”と主張した。

続けて彼は、“左派政治のテーブルの構成をし、これを中心に党建設に対する具体的論議をしていこう。”と討論者らに向かって提案した。

 

 

しかし、パク・ジュンソン活動家(社会主義労働者連合)は、“結集の具体的条件と山を明らかにしないでは、論議の進捗がだめだ。”と同時に、“社会主義の勢力が微弱なため、今はあらゆる可能な力量を、労働の現場の中に移させて、現場と連携させねば為らない時だと語った。続けて”労働時間短縮を通じた、働き口を分けるような資本主義に正面で立ち向かう闘争を展開しなければならない”と付け加えた。

 

 

ソン・デュヒョン代表は、“民主労働党だけ悪口を言うからといっても、対案が出てこない。我々の状態をあらかじめ見たらよかった、社会主義の活動が事実上ない状態で、党建設をどうしようということ以前に、討論者らがどんな活動をして行くのかが先に提示されなければならない。”と語った。

 

 

彼は、“労働者の力は、左派の政治テーブルを提案するまえに、過去10年の間どうして労働者の階級政党建設をすることが出来なかったのか、自ら、評価からしなければならないこと”であると、刃をたてた。

 

 

イム・ピルス(社会進歩連帯)執行委員長は、“運動組織間の連帯は、重大な課題とか、連帯指向をあらゆる‘政党’の形態でくるめることはできない”といって、“西欧で、政党の分割は、大衆運動を変化させようとすることよりは、分割しようとする傾向を生み出して、これは、結局西欧の左派運動の墳墓となったと言う事実を、念頭におく必要がある。 (訳 柴野貞夫)

 

 

 

解説

 

07年12月大統領選挙において、資本自らが生み出した罪科である<失業と非正規雇用>を逆手にとって、<雇用の創出>を餌に、民衆の捕獲に成功した韓国資本家階級の代弁者・イ・ミョンパクは、50lの得票によって20年ぶりに、かっての軍政与党ハンナラ党を国家権力の座に付けることとした。

一方、アメリカ帝国主義の生き残りをかけた韓米FTA(自由貿易協定)と共通利害で結ばれた韓国資本主義の意向に沿おうとして、労働者と農民に犠牲をいとわなかった自称参与政権、ノ・ムヒョンの後継政党が、惨敗したのには十分な理由がある。

 

 

軍事独裁に市民的権利を対置したノ・ムヒョンが、過去に溯って歴史を総括したことは評価されるが、現実の国家政策は、米帝国主義の世界侵略戦争を支える韓米軍事同盟の下での基地再編を農民の土地を占拠することによって行っている「ピョンタク(平澤)米軍基地移転強行」と「イラク・アフガン派兵」を継続し、構造再編を労働の犠牲によって切り抜ける資本の攻撃の容認、労働運動を巨額の「賠償金請求」の対象とする労働法や、あらゆる法の上に聳える国家保安法を存続させ、労働人口の50lを超える非正規雇用を許してきたのを見れば、今日の日本の、自公資本主義政権となんら変わるところはない。

 

 

また、ノ・ムヒョンが具体化した南北和解への流れは、もはや、保守守旧派を含めた軍政与党によって押しとどめられるものではなく、むしろ、韓国資本家階級は、新自由主義市場の北への拡大のチャンスと見なしている。それに犠牲を強いられている韓国労働者民衆にとって、思いは複雑である。民族統一への熱情は、自分達への新しい犠牲転嫁への憂慮となるかも知れないからだ。

 

 

こんなノ・ムヒョン政権与党を批判し、同時に韓国資本の新自由主義の代弁者、イ・ミョンパクとハンナラ党を糾弾し、労働者民衆の代弁者として出馬した民主労働党・クォン・ヨンギル候補が、3lの得票に終わり惨敗したことは、いま、韓国労働者民衆の側の政党政派と運動組織に、深刻な反省を生み出している。

 

 

2004年4月15日、ノ・ムヒョン弾劾裁判時の総選挙で10lの得票を獲得し、韓国国会に初めて労働者の利害を掲げる政党が登場した。1995年にそれまでの軍政の御用労働組合ではなく、国家権力と資本家階級から独立した労働者の組織である民主労総を基盤として、2000年民主労働党が誕生した。今、2007年大統領選挙は、何故、生きる権利を蹂躙された非正規労働者や、資本と国家の横暴に抗議する民衆による、現政権(ノ・ムヒョン)と資本家の代弁者(イ・ミンパク)双方への批判が、民主労働党への支持に結びつかなかったのかを巡って、党内の対立と分裂が進行しているのである。

 

 

ここに紹介した「変革政党模索の討論集会」の要約は、は、このような大選後の韓国の労働主体の側の危機を、階級的立場を志向する、(民主労働党を除く)政治集団や知識人によって分析討論されたものである。これは日本人のわれわれに、いくつかの示唆を提供するものである。

 

 

韓国の労働者民衆の階級的立場に立つ左派の政治的指導者たちが、「国家保安法」の存在を横に於いて、公然と社会主義革命を志向する党の建設が急を要していると語る姿が熱情的且つ新鮮である。今、韓国資本主義体制の矛盾は、労働者民衆の権力による社会主義への志向によってしか解決できないと明確にし、「利潤生産でなく必要充足を目標にした社会主義計画経済と、その基盤としての独占部門の社会的所有」と「労働者階級の権力を指向する民衆権力」を最低綱領として明確にした、社会主義的階級政党への結集をしめし、他の一人は、それへの過程において、地域を基盤とする「二重権力」としての「評議会(ソヴィエト)」の組織化を想定している。

 

 

韓国の左派政派は、主として6月抗争を戦った時代からの思想的流れとしての自主派(NL派)を、北の社会主義を肯定的に見る民族派(民族主義陣営)と呼ぶのに対して、自らを、平等派(PD派)を含めて「左派」乃至は「左派指向」のグループと称し、現政権(ノ・ムヒョン)の386世代の執権グループを「自由主義派」。ハンナラ党を初めとする軍政与党グループを、「保守派」と呼んできた。

 

 

つまり、左派による韓国の「社会主義への道筋」は、北の「社会主義」モデルに捉われない、開かれた労働者民主主義に基く自らの社会主義として、国際的な視野と関係の中で捉えようとしていると言うことができる。「二重権力」について言えば、人は、ロシア革命における労働者民主主義としてのソヴィエト組織を想像するが(それでもよいが)朝鮮半島の歴史の中で、朝鮮民族は、東学党の乱と、1945年代朝鮮南部米軍軍政下、及び北部朝鮮において二度にわたって類似の経験をしていることを忘れてはならない。

 

 

キム・セギュン(ソウル大・政治学)教授は、民主労働党の敗北を、党が、「進歩運動の革新と急進化を願う平党員や、大衆の社会主義への指向を汲み取り道筋を示しなかったことにあると示唆し、「労働者の力」は、他の文書で、「政派連合と大衆組織(民主労総)の混成部隊によって出来た民主労働党は、大統領選挙において、実体のない改革的大衆を追うために、非正規職労働者をはじめ

労働者の願いに道筋を示さなかった。」と指摘し、「資本主義体制とその運営原理から抜け出す急進的政策がない。庶民所得保全や福祉拡大も、社会が工場、病院、大学を所有すべきと言う急進的主張を結合できず、民主労総組合員に、<クオン・ヨンギル候補>を押し付ける“階級選挙”をした結果」が、労働者民衆の失望を買い敗北の原因となったと言うのだ。

 

民主労働党内部では、(チャムセサンやハンギョレの報道で我々が知る限り)「平等派」が、執行部多数派を握る「自主派」に対して、彼らの「北核武装の容認と一心会事件に見られる従北主義と、民主労総への依存」が、国民の離反を招いたと主張し、数人の国会議員と党役員、地方支部の集団離党が続いているが、「平等派」の総括が、自主派の従北主義批判にとどまり、民主労聡からの“自立”を主張することは、「左派」の指摘する、単なる議会主義への転落の道を歩むだけで、労働者民衆を裏切るだけではないだろうか。

 

 

韓国における、最も大きな労働者の党(民主労働党)の混乱と分裂が、新しい真の大きな階級政党の誕生を生み出す契機となることが求められている。

 

 

彼ら(左派)は、南北首脳会談と六者協議による朝鮮半島の平和体制の展望を次のように見ている。

 

 

「現在進められている東北アジア、韓半島情勢がたとえ改善される方向へ進んだとしても、その改善が結局、新自由主義の地球化を加速させる結果を生み、同時に東北アジア、韓半島情勢での米国の主導力が新たに形成されることと噛み合う可能性が高まるという側面がある。これは労働者民衆にとって新たな負担とならざるを得ない。」「韓半島の平和の帰結点は、駐韓米軍の撤収だ。帝国主義軍隊の駐屯をほったまま韓半島の平和を期待することは出来ない。・・・韓半島での平和の為の闘争をやりぬこうとすれば当然にも労働者民衆は、全世界の反戦平和闘争の動力としてその主体として喜んで乗り出さねばなれない。特に米国が繰り広げる「対テロ戦争」アフガン、イラク。レバノン、イランなどで起きている事態を韓半島の平和と直接結び付けて考えなければ為らない。」(「労働者の力」第135号)