ホームページ タイトル

 

(朝鮮民主主義人民共和国 労働新聞 20081118)

http://www.kcna.co.jp/today-rodong/rodong.htm

 

 

日本は何処に行っているのか? 田母神《論文》批判

 

 

〇今、日本で政客、歴史家、御用言論らが、過去の歴史を否定する事は日常茶飯事となっている。

〇日本政府は、《再発防止》を言うが、歪曲された歴史教科書を手に教える事を止めようとしない。それは、第二、第三の田母神を作ることだ。 

〇膨張した日本独占資本は、海外侵略に切実な利害関係を持っている。独占資本が、軍部を露骨に押したて,頼りにして、軍部が政権運営に介入する事になれば、《文民統制社会》は《軍部統制社会》に取って代えられるだろう。

〇過去に日本独占資本が軍部の政権奪取を許容した為、アジアがあれ程の苛酷な惨禍を負ったのだ。


(本文から)

 

 

 

日本にこんな諺がある。「将来を考えない者は、不幸な日を免れる事は出来ない。」歴史歪曲論文を、無闇に書いて出し、正当化する妄言を滔々と言った日本の、前航空《自衛隊》幕僚長・田母神が、即ちこうなったのだ。

幕僚長の席から追放されるだけではなく、退職させられた。これだけではなく、彼は国内外的に非難と糾弾の対象となった。当然な帰結だと言う事ができる。

今日は、田母神に不幸が準備された。しかし、明日は日本が、丸ごと収拾つかない不幸に直面することとなる。

日本政府が、田母神を航空《自衛隊》幕僚長席から外す措置を取ったが、それは事実上、彼等に集まる国内外の非難と糾弾の声を和らげて見ようと、狡猾に煙幕を張った事に過ぎない。一言でいえば、彼等は危険を感じる時毎に、尻尾を切り捨てて助けるトカゲ式の戦術を使ったのだ。

今日本で、政客達や歴史家達、御用言論らが、過去の歴史を否定する事は日常茶飯事となっている。執権者や東京都知事のように、中央と地方の権力をしっかり握っている政客等からが、日帝の過去の品行を庇護し肩を持ちながら、歴史歪曲妄言を出鱈目に繰り広げているのが、日本の現実態だ。

万一、日本政府が、田母神の今回の歴史歪曲事件から教訓を探してその再発を防止する、ひとかけらの偽りでない心でも持っていたら、なにわともあれ、中学校などで、歪曲された歴史教科書を手に教える事から中止しなければならないのだ。何故なら、歪曲された歴史を注入された学生達の中から、今後第二、第三の田母神が、列を成して溢れ出て来る事が出来る為だ。しかし、日本政府は《再発防止》を云々しながらも、歪曲された中学校歴史教科書に対しては一言の言葉も話さないでいる。こう言った事を考えてみるとき、田母神の歴史歪曲妄言は、日本政府が、露骨に庇護し肩を持って、執拗に広げてきた歴史歪曲策動の延長線から、飛び出てきたものだと言う事が出来る。

日本反動支配層の歴史歪曲策動として、日本社会は日増しに、さらに軍国化されている。今回の事件はその具体的表現だ。

日本企業界が、金をばら撒いて軍国主義の思想を広めている。日本の一つの不動産開発企業が、堂々と軍国主義歴史観を広める為の《論文懸賞応募》を主催し、田母神の《論文》に最優秀賞と共に莫大な賞金まで授与した事は、その代表的実例になる。

今日、日本の独占資本は、膨張されるまま膨張された。彼等は慢性的な経済危機に苦しめられながら、海外侵略に切実な利害関係を持つ事となった。ここから彼等は、海外侵略の思想的始動を打ち立てる為に軍国主義歴史観を社会に注入するのに、金を惜しまず、ばら撒いている。今回の事件が見せてくれるように、日本企業体らは歴史歪曲をどれほど上手にしたかによって、《論文》を書いた右翼分子達に賞金金額を高くしてやり、歴史歪曲策動をけしかけている。

日本《自衛隊》が、軍国主義の毒素に深く汚染されている。今回、民間企業が主催した《論文懸賞応募》に208名の航空《自衛隊》の将校達が参加した事実がそれを実証してくれる。

日本防衛省は、これに対して憂慮する様でもなく、《稀な事》だと驚きを表している。しかし、驚く事は一つもない。日本で軍国主義思想を第一に度強く注入されている事も、インド洋とゴラン高原など世界各地域に堂々と進出し、軍事活動を広げ、侵略の野獣として手なずけられているのも即ち《自衛隊》だ。しかし、《自衛隊》将校達の頭が軍国主義の毒素に麻痺され、正常思考を出来ない事は自明な道理だ。今回日本政府は、《文民統制社会》で航空《自衛隊》の主要責任者が、彼らの政策と歩調を合わせなかったのだと言う式に、言葉の遊びをした。こうであれば、日本で《文民統制社会》がやはり、永く持続するのだろうか?ここに問題がある。

日本防衛庁が、防衛省に昇格された後、軍部が政治に及ぶ影響力が,さらに大きくなっている。今後日本で、政治経済的危機が深化するほど、独占資本が軍部を露骨に押したて、また彼らを頼りにして、軍部が政権運営に深く介入し乗り出せば、《文民統制社会》は《軍部統制社会》に、容易く代えることが出来る。こんなになれば、20世紀前半期にあったあらゆる軍国主義的事態が21世紀に来て新しく再現される。田母神事件に映し出される、日本社会の反動性と危険性は即ちここにある。

過去に日本独占資本が、軍国主義勢力の政権掌握、特には軍部の政権奪取を許容し、そそのかした為に、軍部独裁の冶下でアジアと世界があれ程までに苛酷な惨禍を負ったのだ。今日、日本は何処へ行っているのか?

これに対する答えは明白だ。日本は、反動勢力たちの主導下に軍国化の道、再侵略の道に、狂ったように走り出している。世界は、こんな日本を警戒の眼差しのまま見ている。

今は、20世紀前半期とは事態が完全に変化した。人々は大きく啓蒙され覚醒された。軍国化の道に一気に走る日本が、歴史の変遷をはっきりと見ることが出来ず、むやみやたらにしては、取り返しのきかない不幸と恥辱に直面する事になる。歴史がそれを証明してくれる事となるだろう。

 (訳 柴野貞夫・20081119)

 
<訳者解説>


政府は、陸海空自衛隊において、日本国憲法の遵守とアジア侵略戦争に対する歴史総括を、徹底的に行う責任がある。


田母神の、《濡れ衣論文》の政治的背景が、日を追う毎に次々と明らかになってきた。
そもそも、まともな想像力のある人間ならばこう考える。他民族の土地に、砲口と銃剣の暴力で押し入り、他国の民衆の家屋に火を放ち、山河と耕作地を軍靴で踏みにじった強盗に、如何なる理屈も言い訳も無いだろう!と。

20世紀前半期の、日本帝国主義軍隊による朝鮮と中国をはじめとするアジアの諸国に対する強盗的蛮行を、「白人国家の支配からの解放」(田母神論文’)と主張し、「我が国の侵略がアジア諸国に耐え難い苦しみを与えたと思っている人が多いが、多くのアジアの諸国が大東亜戦争を肯定的に評価している」(同上)と述べる田母神を、韓国ハンギョレ紙(118日付)は、「程度の進んだ精神病」と呼ばざるを得なかった。歴史の真実は、日帝が、白人国家の支配をまねて追随し、白人国家と取引して行ったアジア侵略であること。そして1905年の朝鮮「併合」から1932年の「満州建国」以来1945年までの間に、日本帝国主義天皇制の植民地支配に対する抗日抵抗独立運動で、毎年数知れない中国・朝鮮人が処刑されてきた。とくに「満州」・中国では、その数は毎年数千人に上った。これが田母神の言う「アジアの諸国が肯定的に評価している日本」の姿だ。かれらは、精神病理学的に「精神病」であると言うよりも、政治社会的に狂った連中であると言う事はできる。

田母神が、(自衛隊には)「攻撃的武器も禁止され、集団的自衛権も行使できない。」何故それが必要かと言うと、「人類の歴史の中で支配、被支配の関係は戦争によってのみ解決されてきた。強者が自ら譲歩することはあり得ない。戦わないものは支配される事に甘んじなければならない。」からだと言うとき、この男の頭のなかでは、国家や民族の間には、軍事力のみを解決手段とする「支配と被支配」「強者と弱者」の関係しか存在しないと言うことになる。

この論に従えば、この世上で日本を、強者と弱者が絶えず入れ替わる、終り無き暴力と戦争の中に身を置けと言うことになる。世界の歴史は、階級闘争を基軸に、国家や民族の複合的な利害関係の中で、戦争が他の手段を持ってする政治の延長である事を示している。アメリカ帝国主義の敗北は、紛争を、軍事力と戦争によって解決しようとする勢力が、惨めな敗北を迎える事を示す何よりの証拠だ。

国民に対し憲法の厳格なる遵守義務を義務付けられた国家の暴力組織(軍隊)の空軍幕僚長(参謀長)の、民間の懸賞論文応募で公然と憲法蹂躙の主張を繰り広げ、且つ、日本のアジアに対する侵略行為に対する国家としての謝罪を濡れ衣と批判したと言う、一自衛隊最高幹部の暴走不適切発言だけが問題なのではない。

戦争と軍隊を、暴力の力学としてしか理解していないような自衛隊司令官が、軍隊と言う実力組織を背景に、国家の政策や憲法批判と言う政治的介入行為を、「言論の自由」だとぬけぬけと主張することが出来る背景が問題である。それが、自衛隊の海外派遣、米国の侵略戦争への加担、何よりも防衛庁の防衛省への昇格を契機に、自衛隊の本来任務を海外派兵においた自民執権政府のなし崩し的改憲策動に沿った動きである事は明らかである。

また彼等が、自民・民主に巣食う超党派右翼国家主義グループの、継続的な改憲策動・歴史歪曲運動に勇気付けられ、自衛隊幹部教育機関で田母神を中心に、日本帝国主義軍隊の侵略の歴史の正当化と、現憲法の公然たる批判を軸とする思想教育が、政府による如何なる制約もなく行われてきた事が、その背景にあるのだ。

以前から、自衛隊の幹部隊員の隊内教育組織において公然と、20世紀を通して日本帝国主義軍隊が犯したアジア侵略戦争の歴史を全面的に肯定し、憲法を批判するするカリキュラムが組まれ、しかも、それを歴代自民党執権政府並びに防衛省が、永年にわたって容認してきた事実が明らかになりつつある。

田母神は、陸海空の幹部を養成する「統合幕僚学校」の校長時代の2004年、その「幹部高級過程」で、「歴史・国家観」講座を新設したが、それを受け持たせた3人の講師は、いずれも日本のアジア侵略の歴史への反省を「自虐史観」と攻撃し、アジア再侵略を憲法改悪によって達成しようとする国家主義者の組織「新しい教科書を作る会」の正・副会長であった。福地惇・大正大学教授、八木秀次高崎経済大学教授、高森明勅拓殖大学客員教授、このうち福地、高森は現在も継続して講師をしている。そのほか、作家の井沢元彦も講師に名を連ねてきた。

田母神は彼らと共に、現憲法を否定し、侵略を美化するカリキュラムによって、これまで400人に上る幹部自衛官を教育してきた。

20073月、右翼国家主義者/安倍晋二を首班と擦る内閣は、田母神を航空自衛隊幕僚長に任命したが、安部が彼の思想や言動、「歴史・国家観」を調査し把握せずに、任命するはずが無い。むしろ、「統合幕僚学校」での役割と、ひろく自衛隊内における(隊内誌などでの)侵略正当化と憲法否定の思想を積極的に評価した結果である。田母神は、空幕長時も全国の基地で自らの思想を公然とその職務として広めてきた。歴代自民執権政権は、自衛隊の最高幹部によるこの政治活動を、平和憲法の解体にむけて、世論を形成する力として容認してきたのである。

国家の暴力組織(軍隊)は、常にその組織と人間によって、暴力の自己運動を孕んでいる。国家の支配階級はそれを、自己のコントロールに従わせなければ為らないと考えるが、階級支配の危機を迎えたとき、彼らが、軍隊を民衆支配の道具として利用し依存すれば、しばしば、彼等は御主人の頭を軍靴で踏み付けることがある。「文民統制」が「軍民統制」に成るとは、この事を言うブルジョア民主主義の概念であるが、今日日本は、その様な事態の入り口に立っていると言う「労働新聞」の指摘は、的を得ていると言わなければならない。


〇我々は、陸海空自衛隊の全ての教育組織に於ける、教育カリキュラムとテキスト、講義内容を明らかにさせ、日本国憲法を否定し蹂躙する一切のものを摘発しなければならない。

〇政府,防衛省は、憲法遵守義務を重く負わされている「特別公務員」(自衛隊員)の教育機関で、日本国憲法を批判し、改憲を主張する教授、講師を摘発し、直ちに解職すべきである。

〇我々は、アジア侵略戦争と植民地支配の正当化を、日本の歴史教育と教科書で企んで来た「新しい歴史教科書を作る会」の策動を阻止しなければならない。

〇日本国憲法を改悪する、「自民党新憲法草案」を拒否し、衆参両院での「憲法調査会」の始動を許してはならない。

(柴野貞夫時事問題研究会)