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[韓国ハンギョレ紙 2009年3月12日]

http://hantoma.hani.co.kr/board/view.html?board_id=ht_society:001016&uid=62955

 

 

キム・ヒョンヒ(金賢姫)、KAL(大韓航空)事件、再び光が当てられる。

 

 

KAL爆破事件の7つの謎

 

犯人・キムヒョンヒ[金賢姫]とは、一体誰なのか?

 

 

 

 

<訳者解題>

 

○3月11日、韓国釜山で行われた日本人「拉致被害者」と、大韓航空KAL機・爆破犯人とされるキム・ヒョンヒ(金賢姫)の面談は、韓国人にとって、日本人の拉致問題への関心よりも、謎の多い「キム・ヒョンヒと、KALL爆破事件」に、再び光を当てる機会となった。

 

○ハンギョレ・ハントマ欄に載った、KAL爆破事件の7つの疑問と言う文章は、今に至るも、韓国において、特に第五共和国時代の軍事独裁の暗部が解明されていない事を示している。

 

○かつて、「拉致家族会」と「救う会全国協議会」の西岡,佐藤等が「北朝鮮工作員」なる「安明進」と言う人物を、日本のマスコミに売り込み、一緒になって「北朝鮮と拉致者の消息の真実の情報」なるものを垂れ流していたが、実はこの男は、単に脱北し、北情報を売り物に韓国と日本の間を、佐藤などの手助けで往復し、麻薬を密売していた犯罪者に過ぎなかった。同様に、キム・ヒョンヒと言う人物が何者であるかについて、再び光が当てられるかもしれない。

 

○しかし、この筆者の論旨は、7つの疑問を提起するまではよいが、韓国安企部と北韓との「取引き」から生まれたとする仮説は、この文章そのものからさえも、引き出し、結論付ける事は出来ない。

 

○しかし、ともあれこの事件が「北が引き起こしたもの」と言う結論が、極めて根拠が乏しいものであると言う点において、韓国国内に今も囁かれている「安企部謀略説」を知る上で、参考となる文書である。

 

 

 

             

<本文>

 

この間、行方を潜めたキム・ヒョンヒが、突然現れ、マスコミ・ショーを繰り広げた。どうして、突然こんな事が、誰の企画で繰り広げられているのか?これは、ヨンサン(龍山)事態(ソウル・龍山の再開発事業反対で立て篭もった住民を、特殊部隊を投入して虐殺した事件―訳注)や裁判介入事態などで、窮地に追い込まれた‘チュイパク’(李明博の蔑称―訳注、チュイは鼠のことだが・・)政権の‘カン・ホスン事件’(2009年1月発覚した8名の女性連続殺人事件に対する李政権の不手際が指摘されている―訳注)に続く、また一つの、(訳注―軍政時代を呼び戻したような政治手法による失態から国民の)関心をそらす手法なのか?いずれにせよ、この機会にKAL858機事件の真実を探がして見よう。

 

去る1987年、大統領選挙の前に生まれたKAL858機の爆破事件は、いまだに、事件の真実に対して物議を醸す事件だ。

KAL機爆破事件で利益を受けた側が、軍事独裁政権であったことで、その政権が発表した捜査結果を信じることは出来ない。従って、我々は常識を基にしてその事件を解析しなければ為らない。その事件の弱点を、一つ一つ指摘しながら事件の実態に接近してみよう。

 

 

1)  その事件で、利得を得た集団が誰であるか?

 

 

その事件の御蔭で、政権を再創出したチョン・ドハン、ノ・テウ政権だ。北韓は、むしろ汚名だけかぶったのだ。南韓の民主化勢力は、大統領選挙で敗北した。北韓から南韓独裁政権に利益を与え、自分自身に害となる事件を、(北韓が)どうしてしでかすだろう?

 

 

2)  どうして、時期が大統領選だったのか?

 

 

南韓のオリンピックを妨害するために、北韓が事件を引き起こしたとするのだが、どうしてよりによって、オリンピックをしばらく余す、大統領選直前に引き起こすのか?

 

 

3)858機の状態は?

 

 

858機は、二十年が越えた707機中で、大韓航空で直ちに廃棄する古い航空機だった。そして、搭乗客達の中に外国人は殆んどなく大部分中東(で働く韓国の)労働者たちだった。こんな選択は偶然であったのか?北韓が南韓のオリンピックを妨害しようと引き起こしたとするが、どうして、外国人や高位層でない市井の労働者たちが乗っている航空機を爆破したのか?

 

 

4)どうして、救助信号もなく消えたのか?

 

 

KAL858機は、危険状態を知らせる如何なる交信もなく、わずかの間に消えた。戦闘機よりも遥かに大きい旅客機は、ミサイルを受けて墜落するとも、墜落する前に危険を知らせる時間は、十分だ。その一つの例に、83年サハリンでKAL007便は、ミサイルに撃墜されたが約12分間滑空しながら緊急救助信号を送った。しかし、858機はいかなる信号もなく屹然と消えた。これは、機体が一方に分解される程度の強力な爆発を受けたり、拉致される場合のほかには説明できない。この程度の爆発を導き出そうとすれば、どれだけ多い量の爆弾が必要なのか?どれだけ高性能の爆弾であっても乗客が携帯電話に隠し持っていく程度の爆薬の量では、不可能だ。

 

 

5)  キム・ヒョンヒ(金賢姫)が使用した爆弾は?

 

 

安企部発表に従えば、事件当日キム・ヒョンヒ一行は、爆弾はビニールのショッピングバッグに入れて、機内の棚にのせて降りたと言う。当時、キム・ヒョンヒ一行を機内で目撃したKALのパク・キルヨン事務長は、男は荷物がなかったし、女はショルダーバッグを肩に掛けていたと陳述した。(87年12月2日付 朝鮮日報)即ち、目撃者の陳述に従えば、安企部の発表で出たビニール・ショッピングバッグは、初めから無かったと言うことだ。さらに、88年、国立科学捜査研究所でキム・ヒョンヒ一行の所持品を化学的試験法など精密鑑定をした結果火薬成分は検出されなかったことが明らかになった。(88年1月15日付 東亜日報)

 

 

6)  航空機の残骸は?

 

 

安企部は、事件発生の2年半ぶりにアンダマン海域で飛行機の残骸を発見したと報告した。安企部はこの残骸に残っている88オリンピック表記また、太極マークの表示で見て爆破されたKAL機残骸に間違いないと発表した。これに比べ、14年が過ぎた今日までも115名にもなる搭乗客の遺骸、更に遺品は、一つも発見されないでいる。世界旅客機の事故史上、搭乗客の遺品、また、遺骸が発見できない事件は一度も無かった。

 

 

7)  ブラックボックスは?

 

 

ブラックボックス(飛行記録装置)だけ発見されても、事件の実態が明らかになる。しかし、残骸探査チームは、原因究明の最も重要な証拠であるブラックボックスを探すために必要な装備(水中共鳴位置探知機)を、備える事もないまま捜索するなど、意図的なないがしろを見せたと言う。

 

8)  結論は?

 

 

上に現れた資料を論理的に解析して見れば、チョン・ドハン(全斗煥)

政権が発表したものより、更に説得力ある、次の様なシナリオが出てくる。

 

12・12クーデター、また5・18虐殺など反人類的罪を多く引き起こしたチョン・ドハン(全斗煥)一党が、大統領選挙で敗北し権力を失う場合、罪の代価を受けるのが恐ろしく、どんなにするか、大統領選挙で勝とうと多様な工作を構えたのだ。そうして出たものが858事件である。

 

それなら、キム・ヒョンヒ(金賢姫)とは誰なのか?

 

韓国安企部[国家安全企画部・KCIA―パクチョンヒから、チョンドハン、盧泰愚と続いた軍事独裁政権の民衆弾圧暴力機関]―訳注)が、海外工作のために秘密裏に育てて来た工作員であるとも、(韓国)安企部の話し通り、北韓の工作員である事もある。キム・ヒョンヒが(韓国)安企部工作員だとすれば、858事件は(韓国)安企部の単独犯行であり、北韓工作員だとすれば南北合作工作となる。南北合作工作である可能性が大きく見えるので、そっちに焦点を合わせて見よう。

 

過去の新聞記事を見ると、民政党とその後身であるハンナラ党は、大選を勝つため大統領選挙時ごとに北韓と取り引きをして来た事を露呈した。どんな振る舞いをしてでも、大統領選挙を勝つことが民政党の究極的目的だとすれば、北韓は大きい金や他の反対給付を受けるために、南韓独裁政権を手助けして来たのだ。

 

キム・ヒョンヒは、(韓国安企部か、北韓かの)上部から命じる通り、ショッピングバッグを持って乗った受け渡し(役)だった。しかし、空港検索台で爆弾が発覚されないことで見ると、キム・ヒョンヒが持って乗ったのは、爆弾で無い無害な物質である可能性が高い。

 

むろん、キム・ヒョンヒは上部から手渡されたものを爆弾と信じて指令通り行動したのだ。

 

しかし、航空機を飛ばしてしまうためには、航空機の極めて重要な部位に相当な威力的量の爆発物を相当量装置しなければならない。そうであれば、誰がその爆弾を858機に載せたのか?そんな量の爆薬を航空機の重要な部位に、空港検査を避けて装着する事が出来る人は誰なのか?安企部で、ソウルから858機に全ての爆破装置をしたと見なければならない。こうであれば、キム・ヒョンヒは、単純に北韓でしでかしたものの様に、仕立てる為の助演に過ぎないのだ。そして、キム・ヒョンヒを同行した老人は、内容も分らずキム・ヒョンヒについて行って、キム・ヒョンヒに騙されてアンプルを飲み、キム・ヒョンヒに殺害された可能性が高い。そして、キム・ヒョンヒは、今まで爆破事件を自身が犯したものと、信じているのだ。

 

また、一つの可能な仮説は、安企部と北韓の工作によって、858機がインド洋上空で拉致された後、北韓に秘密裏に到着し乗客と乗務員たちが、北で今だに暮らしている場合だ。しかしこれが技術的に可能であるかは分らない。

 

いずれにせよ、二つの中の、どの状況となったのか、このシナリオが安企部(KCIA)で発表した捜査結果よりは遥かに説得力があると見える。(ハンギョレ、ハントマ欄記事)

 

 

[訳 柴野貞夫]