ホームページ タイトル


(韓国民衆言論 チャムセサン 2010・9・15付)

http://www.newscham.net/news/view.php?board=news&nid=58476&page=1&category1=38

 

 

 

軍事大国化を夢見る、日本民主党政府

 

 

―日本の防衛政策はどこへ行くのか?-

 

 

 

ホン・ソクマン

 

 

 

○日本防衛白書

 

日本政府は10日、国務会議で2010年度‘防衛白書’を承認した。白書は、駐日米軍の重要性を強調し、琉球諸島(沖縄)の防衛状況と韓半島情勢に対し詳しく分析をしている。加えて白書には、独島を竹島と言い、独島を日本領土と表記した。

 

この防衛白書は、自民党連立政府から民主党へ政権交代がされた以後、最初に出た防衛白書と言う点で意味がある。しかし、白書の全体的な内容は、以前の自民党政府時の白書などと大きな差異がないと言う分析だ。

 

何よりも日本の国防政策は、今年年末改訂される予定である‘防衛計画大綱’を通じて、向こう5~10年間の民主党政府が構想する日本の防衛と安保政策の骨格と方向が決定されるのだ。

 

 

 

○防衛大綱

 

日本政府は今年上半期、防衛大綱改訂の為の作業を始め、さる8月に総理諮問機関である‘新しい時代の安全保障と防衛力に関する懇談会’が、防衛計画大綱改訂に対する‘最終報告書’を提出した。

 

この報告書は、日本が安全保障の新しい地位と戦略的位相を確立し、国家の安保パラダイム全体の転換を促進することを擁護した。“能動的対応、動的抑制、米日責任分担、離島防衛”の様な重要な政策を提示している。

 

さらに、基本的な国防政策を一定部分打破し、最近までの安全路線から離脱することを主張した。

 

これは、“集団的自衛権”行使を禁ずる憲法解釈と、武器輸出を禁止する“武器輸出3原則”再検討、また更に“非核3原則”再検討の要請などが含まれる。これ以外に、報告書と白書はともに、いわゆる“中国の軍事力と意図の不透明”をことさら誇張し、琉球諸島に軍事配置並びに米日防衛協力の強化を提案している。

 

大綱改訂の基本となる最終報告書が、政府にどの程度受け入れられるかは、まだ不透明だ。しかし、ここから窺がい知る事が出来るのは、民主党が政権掌握前後に表明した“安保政策の再検討”とは、事実上自民党連立政権時代の主要論点を、ほとんど踏襲していると言うものだ。

 

これは、民主党と自民党が、安保政策に関する“大きい政治には大きな違いがなく”、“軍事力整備、米日同盟、対中国防禦、(自衛隊の)海外進出”など、大きな方向で最小限の認識を共有していると言う事を反映する。

 

 

 

○日本の安保政策の変化の推移

 

歴史的な観点で見るとき、日本の安保政策には強い連続性と自己法則性があり、政権と総理の交代に左右されない。冷戦終息以後、“急進的保守”と“斬新的保守”と言う二つの政治路線の交代が鼓舞された中で、この過程で数多い紆余曲折があったが、日本は客観的に相変わらず“軍事の正常化”と言う目標に向かって、一歩一歩前進を継続している。

 

推進方法、程度、時期に一定の差があるが、安保政策の本流(主流)の変遷の趨勢は明らかだ。中国官営[人民日報]は、日本の安保政策の方向に対し、△第一に、自身の防御能力を強化し、各種制約要素に必要な改革を実施するもの。△第二に、世界と地域安保問題で役割を担当し、安保環境を能動的に構築するもの、△第三に、米日同盟の維持、あるいは強化する一方で、同盟内では米国と対等な関係を獲得するもの、△第四に、中国に対しては“両家的”政策をとって対話と協力を推進すると同時に、警戒また抑制均衡を強化するものだと分析した。

 

国防基本政策の変換を主張する報告書の急進的な(?)発想は、日本国内でも多くの批判と反対の声が高くなっている。日本の言論らは“報告書は専守防衛など、基本的な国是の放棄を主張しており、時勢に逆行し有害無益だ。”と指摘している。[朝日新聞]は社説で、“報告書は、脅威を誇張しており、軍事力整備を訴える必然的理由が不足する。これは地域の軍備競争と摩擦の激化を引き起こす原因となる。”と厳しく指摘した。

 

[ジャパンタイムス] も、“日本は、意図的に中国に対する警戒態勢を築いているが、これは両国間の緊張を激化させるだけだ。事実、東中国海(訳注―東シナ海)に関して、中日間に衝突が頻発する最も根拠ある説明でもある。”として、鋭く指摘している。                                                                   

 

 

 

○日本の古い課題;中国牽制と米日同盟強化

 

日本政府の‘防衛計画大綱’が出るや、具体的な輪郭が捉まえられるが、日本の防衛戦略の中にはどれ一つ容易いものはない。特に、民主党政府が以前の政府よりも、更に際立った軍事主義的膨張を企てる事となれば、東北アジア情勢は恒常的緊張状態に急変する事もある。

 

日本の領土紛争は、上にはロシアのサハリンと、韓国とは独島問題として、中国とはタャオウィダオ(尖閣)をめぐって煮え切らない攻防が続いている。

 

先日、ジャパンタイムスの言及もあったが、最近紛争海域である尖閣諸島近隣で、日本が中国漁船をだ捕し船長と船員を抑留し、中日間の紛争が激化された。日本は13日14名の船員達は釈放し漁船は中国側に返したが、船長を拘束し法的処罰を進めるとして、火種が依然として残っている状態だ。

 

一方では、経済協力とかエネルギー交流などが拡大されているが、軍事的な緊張状態は持続的に維持される他にない。これは、米日の同盟関係の為にもっと拡張される形態を帯びる事となる。

 

しかし、米日同盟関係も、単純に米国との関係としてだけ形成されるものではない。韓国と中国との関係でも相対的に緊迫される為に容易くない問題だ。特にイ・ミョンパク政府が親米的外交国防戦略を繰り広げ、チョナン艦事件以後さらに米国密着的な関係となりながら、(それによって)むしろ日本が圧迫を受けている。

 

一例に、チョナン艦事件が北韓の所業だと言う韓国政府の発表直後、東北アジア情勢が険悪に移っていくや、鳩山前総理は普天間基地移転問題を米国と電撃合意してしまった。

その結果、鳩山は総理の席から退かなければならなかった。反面韓国がチョナン艦外交を、米国を頼みとして始めながら、韓米関係はさらに仲良くなって相対的に米日関係は疎遠な動きまで見えている。

 

この間、クリントン米国務長官の演説が話題に上がった事がある。

去る8日ワシントンで、クリントン長官は演説の中に、“米国は、韓国、日本、豪州など同盟諸国と紐帯関係を再確認し、中国とインドの関係が深くなった。”と言った事がある。アジア太平洋地域の同盟国を、列挙するとき韓国を日本より先に置いたというものだ。

 

これをめぐって、各国言論では米政府の官吏が、演説で日本を韓国より後に置くのは極めて異例だとみなした。日本政府関係者は“米軍普天間飛行場の移転問題などで、関係が冷却した米日同盟の現況が、反映されたのではないか、”と指摘した。

 

更に、クリントン長官はこの演説で、日本のイランに対する追加制裁の実施も激励したが、韓国のイ・ミョンパク政権を高く評価して、韓国が対アフガン支援を強化したと称賛を惜しまなかった。

 

米国としては、誰が更に米国の為に奉仕するのか? 競争族の様に韓国と日本の関係を見守っているのだ。

 

東北アジア地域内で、特定国家の軍事化が駆り立てる余波は、極めて破壊的だと予想される。日本民主党政府が、過去政権と同じ、或いは、それよりも更に拡張された軍事主義路線を選ぶ場合、東北アジアの緊張状態は予測が不可能な状態にのめり込むだろう。

(訳 柴野貞夫 2010・9・25)



 

 

(訳者解題)

 

先日、民主党政権下で、初めて発表された2010年版「防衛白書」は、菅政権の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(以下「安保防衛懇」)が、8月27日に発表した報告書を紹介し、民主党政権によって年末に策定される予定の「防衛計画の大綱」に反映される検討材料だと主張している。

 

「安保防衛懇」報告は、○日米軍事同盟の下で、米国(本土)と米軍艦に対するミサイル攻撃に対し、自衛隊が護衛出来る軍事活動を容認する為の憲法上の制約を排除することや、○日本帝国主義の軍拡の歯止めとなってきた「武器輸出三原則」と「非核三原則」の撤廃や見直しを公然と主張し、○「国際社会の平和と安定が日本の平和と安全に密接に結びつく」として、自衛隊の海外派兵の必要性をことさら暗示し、日本帝国主義の海外膨張のための独自の軍事的恫喝体制の確立を、当面、日米同盟を通じて図ることを提言している。

 

これは、(侵略的軍事行動を生み出す)「集団的自衛権」の発動を容認する為に、日本国憲法の制約を蹂躙する解釈改憲を通して、改憲を強行する菅資本家政府の意図そのものである。

 

新外務大臣の前原は、従前から日本帝国主義の私的利益を代弁する好戦的軍拡論者として、アラビア海から太平洋に到る日本資本主義のための「シーレーン」を防衛する自衛隊の出動を主張してきた。さらに、「敵」のミサイル攻撃には「敵基地攻撃」のためのミサイル攻撃能力の整備が必要と主張してきた人物でもある。外交が、常に軍事的恫喝を背景に持つべきと考える人物の登場が象徴するように、チャムセサンが指摘する菅資本家政府の軍事大国化の夢は、東北アジアの軍事的緊張と政治的不安定の予測できない混乱だけを生み、日本民衆にさらなる犠牲を強いるものである。

 

 

(参考サイト)

 

12月16日更新
「ミサイル防衛(MD)システム」を軸に軍拡に走る日本政府と日本の軍需産業