(チャムセサン 韓国民衆言論 7月26日付)
韓国人 拉致事態 なぜ?
派兵反対国民行動、「占領と派兵のため」と主張
外信報道が降り注ぐ中で 青瓦台(大統領府)が、アフガニスタン武装勢力が22名の韓国人を人質として捕らえているのを確認した。8名の釈放説が、誤報として確認された訳だ。タリバン武装団体の民間人殺害は、どんな理由からであろうと正当化されることは出来ないという事には異論は無い。
更に今回の事態によって家族たちに拭う事が出来ない傷を残したし、拉致者らの無事帰還と軍撤退の為努力して来た反戦運動の努力も顔色なしに生まれて来たと言う事が、派兵反対国民行動の判断だ。継続された韓国人拉致と死傷事件などと関連して一貫して“占領中断、平和の為の軍撤退”を主張して来た、派兵反対国民運動は、26日記者会見を開いて“拉致者釈放とアフガン占領終息、及び即時軍撤退”を繰り返し要求した。
拉致された韓国人らの無事帰還を願う
記者会見の参席者達は、故ペ・ヒャンギュ牧師を哀悼する黙祷で記者会見を始めた。派兵反対国民行動は”拉致された韓国人たちの無事帰還を願って早期に拉致者を釈放する事を要求する内容を明らかにした。パク・チョンウン参与連帯平和軍縮センターチーム長は、"無垢な市民を拉致し殺害の威嚇をする抵抗方式は、暴力の悪循環を持ち込むだけだ。今までアフガニスタンで数多く殺されてきた犠牲者たちに対し、同様にあまりにも胸が痛んでいる。またこれ以上、こんな苦痛を経験する人々が生まれ出るのはいけない“と。さらに米国のテロとの戦争を支援し同盟軍として参加した韓国政府が、まさに韓国国民に対しては、韓国軍派兵の目的と役割、現地状況に関する真実を知らせずに来たと指摘した。
同じ脈絡で、パク・ジョグン チーム長は、“(韓国政府は)対テロ戦を遂行し同盟軍を支援する為に韓国軍を派兵しながら、アフガンの再建支援の為に派兵したかのように国民を糊塗して来た”と批判した。派兵反対国民行動は、25日、“アフガニスタンにたいする外勢(米英・NATO軍)の占領が終息されることを、アフガニスタン民衆の力でそこに平和が定着される事を、心から願う。”と、拉致された韓国人達が無事に釈放されることが出来るように、国際連帯アピールを発表したところだ.
拉致事態を呼んだ原因は、占領と派兵支援にある
今回の拉致事態を見通す派兵反対国民行動の主張の骨子は、“米国の占領と、この様な覇権戦争に同調した韓国政府の派兵政策にある。”と言うもので、この日、記者会見では“故ペ・ヒョンギュ牧師の犠牲は、悲劇の対価”への刹那さと、追加的悲劇的事態を防止する為に“撤兵”せねばならぬと言う切迫感を表した。
タリバン武装団体らは、米国がソ連のアフガン侵攻当時、CIAが直接介入してタリバンを支援し成長させて来た事は、よく知られた事実だ。
こんなタリバン武装団体らが米国が主導する占領に抵抗している。そうであるから、覇権戦争と占領に反対する武装団体らは、派兵国家らの民間人を、拉致の対象と見なす他は無いと言う関係が形成される。
アフガニスタン戦争はテロとの戦争の始まりだったし、イラクにつながり、イスラエルとの戦争を通じてレバノンまで、覇権戦争は継続されており韓国軍はこれと同じ国家に”平和再建“を名分として、占領軍とともに派兵されて来た。
キム・クアンイル共同運営委員は、“アフガニスタンは、完全占領状態だ。全地域の90パーセントの電気が供給できずアフガニスタンの首府であるカブール地域の場合も1日に2時間程度電気が供給されるぐらいの状況だ。平均寿命が40代初中半に、低くなっている位の占領状況だから生きるのに苦労する状況だ。国民的武装団体らの抵抗が継続されている状況だから、占領軍への標的は、主要派兵国家の民間人となる他はない。”と連関関係を説明した。
派兵反対国民行動は、“韓国人達が、なぜ拉致の対象に成ったのかに対する根本的質問には、韓国政府が、ノムヒョン政府が占領支援政策を維持し派兵を通して支援してきた為”だと強調して、“今回の拉致事態と悲劇の原因は、占領と派兵にある”と基本的責任を韓国政府に問いただした。
政府が“旅行禁止”を対策として発表するのではなく、占領状況と同時に派兵が総括されなければ、派兵国の民間人が拉致される根本的なものとして、事態は解決できないと指摘した。
政府は最善を尽くし、対応すると言っても・・反復される悲劇に、どう責任を負うつもりか?
拉致者の規模と、イラクとアフガンの占領時期と言う条件的差異がある事はあるが、拉致者を救う為の政府の歩みは、2004年に比べ、少し多角的に進行されている事だけは事実だ。チョン・デヒョン派兵反対国民行動企画団長は“2004年、(イラクにおける)故キム・ソンイル氏被殺当時と比較すれば、政府なりの努力はしている様だが、無辜な犠牲が生まれたと言う結果は同じだ。
うわべでは異なるが、終局では一緒の他はない理由は、米国の原則に忠実で、むしろ国民の生命を守るのに韓国政府が積極的に乗り出す事が出来ない為“と指摘した。
米国とNATOを意識して、タリバン武装団体が韓国政府との直接的交渉を要求したと言う外信(報道)にも、政府は沈黙を守って、韓米同盟の原則に立脚して覇権戦争には忠実に働きながらも、この同じ事態が発生すれば無能力をさらけだした様なものだと言う解釈だ。特に、占領が継続されておりその占領地に軍隊を派兵している以上、2004年でも2007年でもそれ以後でも、拉致と武装団体の脅威は継続発生する以外になく、政府の対応が多角的に進行されるとしても避けがたい結論に到達する可能性が高いと心配になる見通しだった。
キム・ウンジン民主労働党最高委員は、占領地の広がっている多国籍軍の軍事作戦を糾弾した。タリバン武装団体が、捕虜と人質を交換する意思をほのめかさないならば他の人質を更に殺すと警告している状況でも、米軍とNATO(北大西洋条約機構)連合軍の首脳部は、捕虜釈放の立場を明らかにしていないと言うのが根拠だ。
特に韓国人の拉致消息が伝わった直後である20日頃、カズニ州一帯に兵力を集結させ包囲したと言う報道が出てきた。韓国人人質一名が殺害された事を確認された25日夜には、NATO軍も救出作戦に対備して緊急に兵力をカズニ方面に移動させたと見られると、外信が報道した。
さらに、25日には最近二日間、新たに南部各地で広げられた鎮圧作戦でタリバン叛軍75名以上が射殺されたと言う内容が報道された。青瓦台は公式的に軍事作戦はないと強調したが、外信はアフガン内連合軍の軍事作戦は、続いている事を確認してくれている。
キム・ウンジン最高委員は、“こんな行動は韓国人拉致者らの危険を更に煽り立てていること”だと批判し、“帝国主義の占領中断と即刻撤兵だけがこれ以上の悲劇を終えることが出来る”と主張した。
占領中断、軍撤退宣言で、これ以上の犠牲を止めろ!!
記者会見に参席したクム・ミン韓国社会団代表は、“基本的解決方案は、平和憲法の制定にある”と主張した。韓国憲法の前文と四条には、韓半島統一問題に対する平和主義が明らかにされている。全世界的な問題にあって海外派兵が出来るのか出来ないのかに対しては、正確に出ていない。
クム・ミン代表は、“最小限、韓半島問題にあって平和統一を指向するために平和主義的な要素を持っているし、平和主義的原則は、国家の基本的な原則にならねばならず、統一問題だけではなく国家の目標、指向、価値の問題で一貫する平和国家となることが出来るように、憲法を改正せねばならない”と言うことが、主張の骨子だ。
派兵反対国民行動は基本的にアフガニスタンだけでなくイラク、最近派兵したレバノンなどの韓国軍を撤兵しないならば、以後第二のキム・ソンイル、第二のユン・チャンホが生まれるほかは無い。“と警告した。続いて、これらは、”武装団体の脅威に曝されて異なる犠牲者が生まれることを防ぐ唯一の方法は、占領中断と派兵した韓国軍の撤退だけだ“と政府の決断を要求した。
( 訳・ 柴野貞夫)
解説
チャムセサン『7月26日付』の解説記事は、アフガンでのタリバンによる韓国人拉致事件が、9・11とアルカイダ掃討を口実とした、米英帝国主義によるアフガン侵略に加担し、その占領政策を支援してきた韓国政府の軍事派遣に起因することを指摘している。
派兵反対国民行動は7月26日ソウルで記者会見を開き、23名の韓国人拉致事態、(ペ・ヒョンギュ牧師にひき続いて、7月31日、シム・ソンミン氏の死が確認されている。派兵反対国民行動の記者会見で、憂慮されていた予測通りの結果である。)が、主権国家(タリバン政権)を武力で侵略占領した米英帝国主義とそれに加担するNATO多国籍軍はもちろんのこと、他でもなく韓国軍を派遣しているノ・ムヒョン政権の責任でもあることを、明らかにしている。韓国政府は、韓国軍の役割は、工兵・医務だけであって、戦闘部隊では無いと言うが、現在駐留する230名は、米軍バグラム基地に所属しアフガン住民を見境い無く虐殺している米軍〈掃討部隊〉をしっかり支えているのだ。(現在のイラクに於ける日本自衛隊空輸部隊派遣と、テロ特措法によるインド洋での給油支援と言う日本の米軍後方支援も、米軍の戦闘行為との一体化そのものである。それなくして、いかなる戦闘行為が出来ると言うのか?兵站活動は軍事行動の中心である。「戦闘部隊ではない」などと、韓日政府ともども、民衆を口先で欺瞞してはならないのだ。)2007年2月28日、アフガンを視察した米・チェイニー副大統領の滞在先もこのバグラム基地であり、この基地の前でチェイニーを狙った自爆テロで、韓国軍ユン兵長が、爆死している事からも、韓国軍の役割は明らかだ。韓国兵の派遣は延べ3600名に及んでいる。ノ・ムヒョン政権は、現在イラクに2300名の戦闘部隊・医療・工兵を送り込み、レバノンにもUNIFIL(国連レバノン暫定軍)として280人を駐留させ、韓米同盟を忠実に実行している。
ノ・ムヒョン政権は、韓国が朴正熈軍事政権時、1964年7月から8年8ヶ月に渉って米軍のベトナム侵略戦争に加担し、延べ31万2853名の兵士を送り込み、米軍の先頭に立って民衆虐殺を行って来た、歴史の総括を欠いたまま、アメリカ帝国主義による世界的規模の侵略行為に加担する行為は、許されるものではない。ましてそれは、ノ・ムヒョンが主張する、「東北アジア平和共同体の構築」と、どこでどの様に整合するというのか?
6月民主抗争の中から生まれたはずの、韓国中産階級の〈参与政権〉は、軍事政権時代に深く恩恵を受けた保守言論や財閥・企業・ハンナラを軸とする右翼政治勢力からは、〈左翼政権〉と攻撃されるが、韓国資本主義体制を労働者階級から擁護する国家権力としての傾斜は否めない。軍事政権を支えた国家保安法と労働三権の制約を、いまだにだらだらと引き摺り、韓米自由貿易協定(AFTA)に曝された韓国労働運動
を、治安問題的に対処弾圧し、労働者の権利よりも資本と経営者の利害を優先する「参与政府」の姿に、あの6月民主抗争の「理想」を見出すことは、難しい。
米英軍・NATO多国籍軍と、その庇護の下に〈復興活動〉を行う国連が、アフガニスタンに居座り続ける根拠はあるのか?
アメリカブッシュ政権は、2001年9月11日の、ニューヨーク貿易センタービルの疑惑に満ちた崩壊とペンタゴンの部分破壊と言う、「同時テロ」が「世界テロ組織アルカイダ」なるものの所業と断定し、それと関係した国家がアフガニスタンとイラクだとして、この二つの主権国家への侵略を正当化した。同10月8日、アフガニスタンの首都カブールをはじめとする6都市を、40機による空爆と50発の巡航ミサイルによって破壊し、その後も、そのほとんどの国民が飢餓線上を彷徨つている極貧農業国家の、村落の頭上と畑の上に、無数のクラスター爆弾、地中貫通爆弾、熱圧爆弾等およそ考えられる非人道兵器をばら撒き、無差別虐殺を、今も尚繰り返している。
2002年3月には、多国籍軍の名の下に地上軍を進入させ、タリバンやアルカイダの掃討と称して村々の破壊と農民虐殺を継続しているのだ。オサマビンラディン一人を探す為に主権国家が侵略され、アフガン農民4000人(×10とも想定されている)が虐殺されている現実を、アメリカのテロに対する正当な戦争だと支持するとしたら身の毛のよだつ犯罪行為への共同正犯である。小泉は、ブッシュに直ちに支持を表明しテロ特措法をいかなる審議もせずに強行成立させ、安部もまた、この10月にその延長を狙っていることは、我々日本国民もまた、米英帝国主義のアフガニスタンにおける蛮行に深く関わってきたことを、改めて思い知らされるのだ。
少数民族のタジク人などが中心の北部同盟を基盤とするカルザイ政権は、せいぜい首都カブールの周辺にしか実効支配の及ばないアメリカの傀儡政権である。多数民族・バシュトウーン族を基盤とする旧政権タリバンが、南部諸州を実効支配しているアフガニスタンの状況は、アメリカや多国籍軍がアフガンを占領する侵略軍であることを示している。タリバンが韓国人人質交渉において、カルザイ傀儡政権を相手にしないのは、ここに理由がある。アメリカのアフガン侵略の正当化の上に乗り込んだ国連は、いかなる調整能力も無いだろう。「テロリストへの譲歩はありえない」として、タリバン捕虜の交換に応じないように、カルザイに指示するアメリカは、人間の命よりも資本主義の私的利益が第一なのだ。韓国の民衆の怒りと抗議の矛先が、占領軍であるアメリカに向かうのはあたりまえである。
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