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韓国ネットニュースPRESSIAN 国際ニュース2011420
http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=50110420075028&Section=05


     福島原発事故、最悪の場合、東京都は無人地帯となる(その3)


[インタビュー] 小出裕章、日本・京都大学原子炉実験所・助教

日本政府は大混乱を拒もうと情報を遮断した

<チョン・ウンイ>:この様な有時に、正しい認識を持った小出さんの様な外部専門家が集まって、福島の現状を省みたり、或いは対策を講ずるようにするのが望ましいのですが・・・
<小出>:私は、国家に嫌られている人間だから、原子力発電所の中に絶対いかせてくれない。原子炉の専門家ではあるが、原子力に反対する専門家であるために絶対受けいれてくれないのだ。実は、福島原子力発電所を最もよく知っているのは、福島の現場の人であって、私ではない。
こんな時、外部の専門家らが関与するにしても、ほとんど助けにならない。だから、私はやはりこうではないのか」と考えを示すのだ。今、私が言っている話は、福島の専門家も皆認識している事実だと思う。こんな場合、現場を最も良く把握している人々が、正しい情報を伝達する事が重要だ。
しかし日本政府は、正しい情報を知る事となれば混乱とパニックを煽ぐと考え、「安全だ」式の情報だけを提供してきている。


<チョン・ウンイ>:そんな事をすれば、むしろ混乱し、もっと疑心を生む事となるのではないですか
<小出>:そうだ。パニックを防ぐことが出来る最も良い方法は、正確な情報を提供する事だと絶えず言ってきた。だが、もどかしくも、今の政府はそうは考えていない様だ。

<チョン・ウンイ>:地震と津波が起きたとき、韓国では日本国民の沈着な対応に感動し、全国民的な支援と応援があった。しかし、原子力発電所事故に対処する日本政府とメディアに対して、積極的なアクションを起こさない日本国民をみて、こんな態度に対し、だんだん不満を吐露し、憤怒する雰囲気さえ出ている。
<小出>:国家や政府に対する日本国民の順応的な態度は、長い歴史を通して形成されてきたと考える。韓国の歴史は、あまり知るところではないが、日本という国はお上に服従しなければならない意識が長いあいだ続いてきた。権力を持ったお上側から見れば、百姓(民−たみ)を従わせるだけで、理由を説明する必要はない(民可使由之 不可使知之)」という大原則がある。「情報を公開せず、ただ為政者の言うことに従えば良い」式の統治方法が、歴史の中で実施されてきた。これがなかなか変わっていないのだ。

<チョン・ウンイ>:市民団体や、原子力発電所の危険性を知っている人達が、その危険性を訴え反対の努力をしてきました。一方、巨大利益を前面に立たせ、全国民的広報戦略などによって、原子力発電所の必要性を無意識に体得してしまっている人々も多くいます。彼等を最も効果的に説得できる方法があれば教えてください。(訳注−原発誘致市町村では、自治体財政収入の50%以上を、国家と電力会社の交付金[買収金]をあてに依存してしまい、雇用もまた依存してきた実態がある。又、東北大震災と福島原発事故以降、TVとあらゆるマス媒体で、日本は一つなどと、歌手、芸能人を使って、責任の所在を曖昧にする薄気味悪いフレーズを流し続けて来たのは「公共広告機構−()ACジャパン」が出所だ。特に電力会社が原発批判を封じる国民支配に利用してきた媒体だ)
<小出>:万一、そんな伝達方式があれば、私が進んでその様にしたい。いま、福島原子力発電所の事故が目の前で起こった状態であるにも拘らず、依然として原子力発電所が稼働している。この様な事故を目の前で経験したら、ひとまず、あらゆる原子力発電所を即刻停止しなければならないと思うのが、私は自然だと思う。
しかし、日本の人々の大部分は、電気が足りなければ困る。だから、原子力発電所は必要だ」と思う人々が依然として多くいる。韓国は日本と比較してどんな状況なのか良く分からないが、アラブ首長国連邦(UAE)に原子力発電所の販売を成功させた事を国民が喜んだと聞くが、恐らくそうなんだと思う。
日本でもベトナムに原子力発電所の販売をほとんど成功させ、大変喜んでいた。しかし、今回の事故を契機に、水泡にきした。私はそれ見ろ、結局そうなるのに・・・と思うが、(それを)惜しんでいる日本国民も多くいるのではないか。
私は今まで、原子力がどれだけ深刻な危険性をもっているか、多くの人々に伝えようと努力してきた。しかし、思い通りに伝えられないまま、今日に至った。どうするのが最も効果的なのかは、私も良く分からない。
現在、避難している福島現地の人々の中には、原子力発電所に賛成してきたことに対して、自分達が本当に愚かな選択をしたと思う人もいるだろう。しかし、彼らが痛切に感じているのに比べて、他の日本人はどんな苦痛も感じないまま生活しているし、何とかしてもとにもどることを願う人もいるだろう。

人類は原子力発電所を持っては駄目

<チョン・ウンイ>:今回の事故は、運用の失策などに依る人災で、原子力発電所自体の問題ではないと主張する人々もいる。
<小出>:なんと言う話だ!原子力発電所それ自体が問題だ。この事故は地震と津波などの災害で始まったが、災害が起きやすい場所に原子力発電所という危険な装置を建てた。こんな大きな地震や、津波は来ないものと無視してしまったのだ。日本で地震が起こらない所がどこにあるのだ。また、機械は故障をなくす事は出来ない。こんな事を無視し、原子力発電所だけは絶対安全だと主張してきた事が、今回の結果を招いたと思う。
地震と津波に誘発された事故でなかったとしても、機械であるために他の故障を引き起こす事は当然ありえる。特別な原因がなくても、他の種類の事故が起こる可能性もある。私はそれを憂慮しているのだ。原子力発電所の事故が及ぼす影響力と波及力は、火力発電所の様なものとは、全く性質が違う。人類は原子力発電所を持っては駄目だ。この私の考えは確固としている。
しかし、私が原子力発電所に反対する、もっと根本的な考えを話そう。今回事故が起こった場所は、福島原子力発電所だ。電力会社は東京電力。福島原子力発電所は福島にあるが、ここは東北電力の給電範囲であると同時に、責任領域だ。ところが、どうしてこの場所に、東京電力の原子力発電所が建てられているのか。
2007年、中越地震を蒙った柏崎刈羽の原子力発電所も新潟県にある。この場所もやはり、東京電力と関係のない場所であるが、東京電力の発電所が建てられている。どうしてこんな場所に、東京電力の発電所が建てられたのか、一度考えて見る事を願う。
東京電力は、数多くの火力発電所を持っているが、その大部分は東京湾に立ち並んでいる。羽田空港周辺の空から見降ろすと、東京湾に火力発電所が広がっているのを見る事が出来る。電気を作ろうとすれば、当然にも消費地に近い所が最も良い。そうすれば送電線も少なくなる。電線が短くなれば、途中の電気損失も少なくなるので、東京湾に立てるのが当然だ。
だが、原子力発電所だけは東京に建てることが出来なかった。自分たちと全く関係のない東北電力の給電範囲に原子力発電所を建て、長々続く電線を利用して送電している。原子力発電所は危険だという事実を誰よりも良く知っているから、そうしてきたのだ。
私としては、こんな姿勢を許すことができない。「自分たちが電気を必要とするから、東京湾に原子力発電所を建てる」と言うなら、受け入れる余地は少しある。しかし、自分達の使う電気の為に、危険を他の人に押しつける。そんなやり方、態度を、私は決して許しては駄目だと思う。私が原発に反対する、より根本的な理由は、自分の利益のために、他の人々に危険を押しつける、この行為を断じて許せない点にあるのだ。

<チョン・ウンイ>:原子力マフィアと称される、原子力発電所を中心に形成された巨大構造に対する批判が起きています。政治家、企業、学者や文化人、メディアが、その構造の中に一つとなっているという批判もあります。この構造を打破する事が出来る方法はありますか。
<小出>:何か出来る事があれば、私がまず立ち上がる。私もその方法が分らず、いらだたしく焦っている。皆さんがその方法を知ったとき、私に少しでも教えてくれれば、私が出来る事をしていこう。また皆さんが出来る事を見つけたと思えば、皆さんも積極的な行動を広げて下さる事を願う。
私は、原子力の場で仕事をしている。だから、原子力がどんなに危険で技術的、科学的にどんな問題があるのかに対し、人々に知らせていく。これが私自身の責任だと考えている。これからも、この姿勢で活動していくつもりだ。
しかし、先ほども説明した様に、私が原子力に反対する、より根本的な理由は、自分の利益を得るために他の人々に危険を押しつける行為それ自体を決して容赦する事が出来ない為だ。
他の人々を差別し不利益に陥れ、自分たちの利益を得る。これと類似した例などは、原子力という場でなくとも、我々の周辺に多く散らばっている。皆さんがこんな事に反対し、それぞれ自分の場でできる事を一つ一つ行動していけば、私が今している事とも結局はつながっていけると思う。そんな認識と行動をみんなで結集して、互いに多様な動きと方法を展開していけば、こんな差別をなくしていくことが出来ると考える。(続く)                                           (訳 柴野貞夫 2011425)

<参考サイト>
☆ 282 福島原発事故。最悪の場合、東京都は‘無人地帯’となる(2) (韓国・PRESSIAN  2011年4月20日付)

☆ 281 福島原発事故。最悪の場合、東京都は‘無人地帯’となる(1) (韓国・PRESSIAN  2011年4月20日付)