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(北朝鮮・労働党機関紙 2007年1月17日付け)



「緊張状態を激化させる無謀な行動」




・ 米国は年初から”6者会談再開”や”核問題の平和的解決”とか、何やら言いながら終いには、彼らが朝鮮半島の平和と安全、北南協力作業に”関心”でもあるかの様におしゃべりを振りまいている。米国に追従する勢力たちがまたそれに相槌を打っている。
 6者会談と朝鮮半島の平和に対して、しばしば覚えがあるが実際にはその将来にカンヌキを突き刺して妨害をしているのが即ち米国である。米好戦勢力は昨年の朝鮮半島で無謀な戦争演習騒動と武力増強策動を狂乱的に広げて、北南協力の動きを妨害する事によって、朝鮮半島の平和と安全を破壊し、朝鮮の統一を必死で妨害する主犯としての犯罪的正体をあます所なくさらけ出した。米国は、昨一年間南朝鮮とその周辺で我が共和国を甚だしく刺激する軍事的策動を強化しながら、情勢を戦争の瀬戸際に追い立てた。米帝と南朝鮮の好戦勢力は北侵先制攻撃を基本内容として、一つの極めて冒険的軍事作戦計画を新たに作成してその実現に拍車をかけた。

 米帝は昨年、南朝鮮で武力増強策動でも熱を上げた。核航空母艦戦団をプサン港へみだりに押し入れるが、一方戦闘爆撃機をはじめとする機動打撃戦力を南朝鮮に大々的に投入した。米国南朝鮮に米国の戦術核武器(注@)だけでなく、戦略核武器(注A)まで配置することを既成事実化しておいた。米帝と南朝鮮好戦勢力は、我が共和国に狙いをつけた戦争演習を狂乱的に広げた。戦略爆撃機と核航空母艦戦団を含んだ大規模核打撃手段が動員された”連合戦時中央演習”と”ハゲワシ合同軍事演習”、”乙支(うるじ)フォーカスレンズ合同軍事演習”など南朝鮮で連続して繰り広げられる大規模な北侵戦争演習などは朝鮮半島の情勢を極度に緊張させた。米国本土からも我々を狙ったミサイル発射演習とミサイル迎撃試験を強行した米帝と南朝鮮好戦狂たちは”化学武器庫を発見して無力化”させたと言う内容の生化学戦訓練まで敢行した。

 更に厳重視せざるを得ない事は、米帝があの朝鮮戦争でこうむった敗北で受けた教訓を見つける代わりに、いわゆる朝鮮半島”有事時”に多国籍軍を引き込もうとする犯罪的意図を剥き出しにしている事だ。米帝国主義が前年、太平洋上で彼らが56年前に朝鮮戦争を挑発した日である。6月25日に”リムパック2006合同軍事演習”の幕を上げた事は、彼らの変わる事なき朝鮮侵略の野望の発露であった。彼らが昨年”国連軍司令部”を前に出して、あの朝鮮戦争に参加した13ヶ国の追従国家の現役将校達と民間専門家など200名余りを集めておいて、朝鮮半島”有事時”に対備した”特殊部隊運用方案”なるものを謀議したのは、朝鮮戦争に”多国籍軍”を取り入れる為の計画的な策動であった。米帝は、我が国を”大量殺戮武器伝播国”として規定して、”伝播安保発起”を通した”国際的封鎖網”を更に強化しようとする企みを露骨に剥き出した。昨年万一、我が共和国が強力な”自衛抑止力”で米帝の北侵戦争挑発企図を刈り取って置かなかったら、朝鮮半島で戦争の要因が爆発したであろう事は疑いない。

 米国が北南間の和解と朝鮮の統一に”関心”があるかの様に言い触らしているのは、図々しい事、馬鹿げた事だ。昨年、米国は北南間の和解と協力に立ち塞がって朝鮮半島での対立と緊張状態を激化させるために、気が狂ったように策動した。米国の高位人物達が連れたって南朝鮮を行脚して、南朝鮮が対朝鮮制裁に参加しなければならぬと脅迫しながら、北南協力作業に対し各方面で妨害した。昨年、南朝鮮当局が、その何か”対北制裁方案なるものを持ち出して、米国の”対共和国制裁騒動”に加勢したとか、南朝鮮軍部の””参観団”が米国の我が共和国を狙って繰り広げた”大量殺傷武器伝播安保発起”訓練に参加したこと、南朝鮮当局が青年学生統一踏査団と民間団体の平壌訪問の道を遮断したことなどは、北南間の往来と協力交流を遮断する為の米国の圧力と脅しに従ったのだ。米国は何を使っても朝鮮半島の平和を破壊し、北侵戦争挑発を企む張本人、統一妨害軍としての犯罪的正体を覆うことは出来ない。(訳 柴野貞夫)

解説 柴野貞夫

 労働新聞(北朝鮮労働党機関紙)のこの論説は、2006年11月の核実験に至る北朝鮮の置かれた立場を知る上で重要である。昨年、東亜日報(韓国)は、米国のダニエル・グレーザー財務副次官補が、”WTD"(大量破壊兵器)拡散をする”ならず者国家”であるイラン・シリア・北朝鮮の支援網を財政的に孤立させることに韓国政府の協力を要請する為に来韓していたと報じている。国際的な金融制裁で北朝鮮を包囲しようとしている。また、WMDに対する安全保障構想(PSI)の一環として、韓国政府と米国は、”乙支フオーカスレンズ”等の韓米合同軍事演習を行なって来たと報じている。

 アメリカは2006年2月30日、釜山東南海沖で”原子力空母エイブラハム・リンカーン”を出動させ、韓米連合戦時増員演習を行なって北朝鮮に対する核による示威行動を行なっている。この時事問題研究会ホームページの「日本を見る」で触れているが、米国は常に”核兵器を持たぬ国による核兵器保有を防ぐ為”、先制核攻撃による恫喝を行なって来た。一方で、イスラエルの核保有については黙認している。また核不拡散防止条約(NPT)による、核保有国の核軍縮義務を一貫して拒否してきたどころか、核兵器を小型化し”通常兵器”なみに使用することを具体的に想定した訓練をこのように韓米軍事演習という形で韓国沖で繰り返している。

 北朝鮮が警戒するのは、米国は1994年”北朝鮮核危機時に、北への軍事作戦を想定して1059項目の日本に対する支援要求を”民間空港・道路役務調達”に求め、日米軍事同盟の下での戦争準備を行なった。(同年、周辺事態法が制定されている。それは1950年の朝鮮戦争を連想させるものである。) 2006年7月10日付けの米誌、”ニューヨーカー”はブッシュ政権がイラン中部のナタンツのウラン濃縮工場の”核攻撃計画”を暴露した。戦術・戦略核兵器、約10000万を有する米国は2001年、”核体制見直し(NPR)”報告で、核の先制攻撃を公言して憚らないし、2006年8月に作成された核兵器運用指針”統合核作戦ドクトリン”は”通常兵器と一体化した核の運用”を指示している。このような動きを見ると、”ならず者国家”こそはアメリカであると北朝鮮ならずとも考えるであろう。

注@ 戦術核兵器とは一般に、"爆発力の小さいもの”でその運搬手段が射程や航続距離の短い中距離弾道弾や戦闘機など"通常兵器”なみに運搬・使用する。しかし”爆発力が小さいもの”とは言え、広島・長崎で計30万人以上の殺戮をした米軍による原爆の何十倍もの威力を持っている。

 注A 戦略核兵器とは一般に、”爆発力の大きいもの”で運搬手段の航続距離の長いもの、即ち大陸間弾道ミサイルや戦略爆撃機(B52やB2など)に搭載するものを言う。アメリカだけで現在、1万発超保有している。