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    (論考) オスプレイ沖縄配備と、規制なき米軍基地運用の実態を暴く
                                         (2012年10月10日)
                                              

柴野貞夫時事問題研究会

○国民の命と引き換えにした、侵略的軍事行動の先兵―米海兵隊の新装備・オスプレイの配備を粉砕せよ!
○国民の命を犠牲にする、日米軍事同盟―安保条約を即時廃棄せよ!
○闘う沖縄県民と連帯する抗議行動を一層拡大しよう。

●森本敏防衛相は「オスプレイ沖縄配備は米軍の権利であり、日本政府に条約上のマンデート(権限)はない」と、米国の行動に無制限の自由を与える事を主張するが、それは現行安保条約の「制限が課せられた基地使用」の基本概念さえ、自ら否定するものだ

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20日、日本政府は<米海兵隊>の垂直離着陸輸送機・MV22オスプレイの沖縄配備と日本での運用を受け入れた。
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19日の≪日本国に於ける新たな航空機(MV22)に関する日米合同委員会合意≫に基づく政府決定だ。
米国と米海兵隊は、921日から岩国基地で試験飛行を強行し、101日から6日にかけて、12機全機を普天間基地に配備を終了させた。
米海兵隊は、921日の試験飛行から、101日の沖縄配備以降今日まで、日本政府が「日米合同委員会」でオスプレイの「飛行制限」を合意したと説明したにも拘らず、公然と「合意破り飛行」を続けている
沖縄県民はあげて、日本政府に対し、オスプレイの配備の即時撤回、危険な「合意破り」の飛行訓練の中止を要求し、普天間基地各ゲートでの座り込み闘争を中心に、抗議の闘いを継続している。
今後、本土においても、本州四国九州を縦断する6ルート(沖縄を含めると7ルート)の低空飛行訓練が予定され、沖縄と本土住民の連帯の下での全国民的な反オスプレイ闘争が展望されなければならない。
1952年、主権を回復し独立した本土は、沖縄だけを米軍占領下に取り残した。
1972
5月に、沖縄が本土復帰したとは言え、米軍基地はむしろ増え続け、今や日本全土の米軍基地の74%が集中している。日米政府は、世界一危険な普天間基地の閉鎖と交換に、辺野古の海を埋め立て、普天間にも無かった巨大な弾薬庫と、核兵器を搭載する艦船が出入り出来る軍港を持った、より強力な米軍の空・海一体化基地の建設を目論んでいる。
その上、今また日米政府は、世界一危険な米海兵隊の新型装備・MV22オスプレイの沖縄普天間基地導入を強行し、同時に、東村(ひがしそん)・高江地区に住民の工事阻止の座り込み抗議の前で、MV22オスプレイのヘリ基地建設を強行しようとし、さらなる負担を沖縄県民に押し付けようとしている。

△「日米合意」を無視して、普天間市街上空をヘリモードで低空飛行するオスプレイ(出処―沖縄タイムス)

世界一危険と自他ともに認める普天間基地に、「空飛ぶ棺桶―オスプレイ」と言う世界一危険な装備を配置する事は、県民に対する野田政府の「負担の軽減」約束を踏みにじる暴挙であり、むしろ負担の増大と危険の上塗りではないのか。

森本敏防衛相は、オスプレイの導入に先立って、「沖縄米軍基地にオスプレイを配備する事は、日米安保条約上の米国の権利であり、日本政府に条約上のマンデート(権限)はない」と明言した。しかし、現行安保条約でも、政府に国民の意向を貫徹する意思さえあれば、米国に対し配備を拒否し、運用を制限し、物申す根拠はいくらでもある。日本政府は、何等の手立ても打っていない。もしそれが出来ないなら、国民の命を犠牲にする「安保条約」は、直ちに廃棄宣言をすべきだ。
だが森本は、919日、安保条約第条に基づく地位協定に沿った「日米合同委員会」で、オスプレイの普天間配置を前提に、オスプレイの飛行運用に対しても、形の上では制約をしてるふりをするが、その実、無制限な「合意」を与え、米国のやりたい放題を容認した。
その事は、既に、921日の岩国での試験飛行から始まり、普天間基地に配属した101日から現在に至る、沖縄全県のあらゆる人口密集地で、公然と実施されているオスプレイの「合意破り飛行」を見ればわかる事だ。このままでは、森本が726日の参議院外交防衛委員会で、「訓練計画によって、地上60mで飛ぶ場合もある」と答えたが、それが現実となる事態が、沖縄だけでなく、日本本土を縦断する6つの飛行ルートで展開されるに違いない。
1999
年(平成11年)114日、在日米軍戦闘機による低空飛行訓練について、日米合同委員会は、「合意文」を発表、「戦闘即応体制を維持するために必要とされる技能の一つとしての低空飛行訓練」での、「地元住民に与える影響を最小限にし、妥当な考慮を払う」と言う曖昧な表現による「飛行制限」は、現実にすべて破られ、150m以下の超低空飛行が、沖縄と本土を縦断する7ルートで実施され、大きな脅威と被害を生んできた。オスプレイが、従来の戦闘機に加え、同じルートを低空飛行する場合の危険度は計り知れないものがある。
この米戦闘機の低空飛行訓練に関する1999114日米合意が、政府による何らの見直し・抗議もなく破られてきた根拠と、今回の919の≪新たな航空機(MV22)に関する日米合同委員会合意≫が、今、米国によって公然と破られている根拠は共通している。
1999
年の「合意」が反古にされたと言う事は、今回の「合意」も反古になると言う事だ。日本政府は、どちらの場合も、「日米合同委員会合意」において、米軍の行動に制約を与えたのでなく、「米側に配慮をお願いした」だけだからだ。

919日の「日米合同委員会合意」はオスプレイの無制限な運用を容認するものである

前段で「合意」の意義を、従来ヘリと比較して「高い性能を有する事が、...日本及び地域における人道的援助、災害救援及び救助活動をより効果的に遂行できる」と言い、米国の侵略戦争の先遣部隊である米海兵隊の真の役割を捻じ曲げるブラックユーモアから始まる。
次に、「同機の安全性に対する地元の懸念に対し、その運用に最大限の安全性を確保する為、飛行の安全性、騒音規制及び低空飛行訓練を含め、その運用の具体的措置について以下の通り合意した」
○飛行経路及び運用
・騒音の規制措置に関する日米合意を引き続き遵守する意図を有す。
・進入及び出発経路は、出来る限り学校や病院を含む人工密集地域上空を設定する。移動の際は、    可能な限り水上を飛行する。
・夜間飛行訓練は、出来る限り早く終わらせる努力をする。
・通常、米軍施設及び区域内に於いてのみ垂直離着陸モードで飛行し、転換モードでの飛行時間を出   来る限り限定する。
○日本国内の沖縄以外の場所での低空飛行を含む訓練を検討した。
米国政府は、公共の安全性に妥当な配慮を払って飛行運用を実施する。
○日本側から出された、モロッコ、フロリダ事故の検証から出たいくつかの問題点:ナセル制御の限界に至る各種制約が生まれた問題、低空での近距離編隊飛行での問題点等々に対し、そんな事は対応済みなどと言う傲慢な返答に対し、日本側は諾諾と了承した。
○最後に、オートローテーションに関する米側の返答は、この<日米合意>の出鱈目さ加減を象徴するに余りある。
その全文はこうである。
「 日本側から,MV−22が,既存の場周経路からオートローテーションによって安全に普天間飛行場へ帰還する能力を有することの確認を求めたところ,米国側からは,両エンジンの故障という,オートローテーションが必要となる極めて想定し難い事態において,パイロットは飛行場内に安全に帰還するためのあらゆる措置をとる旨の回答があった。」
ヘリコプターでは、エンジン停止時、プロペラの自動回転を利用して、危険度を減少させる構造「オートローテーション」が備わっているが、オスプレイにはそれらの危険回避機能がない。これまでの死亡事故の大きな原因だ。米国側の、「極めて想像しがたい事態」「安全に帰還する為のあらゆる措置」と言う空虚な説明を受け入れた日本側は、森本防衛大臣を通して、「オスプレイの安全性が確認された」と国民を欺いた。
これら「日米合意」の実態は、オスプレイの飛行運用すべてにおいて、安全性の担保もなく、<制約なき取り決め>であり、<米側の配慮を願う>と言う、片務的取り決めである。これは日本国土のあらゆる場所で、オスプレイ運用を無制限に野放しする取り決めである。
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20日付沖縄タイムスは、社説で、オスプレイの「安全性」を認めた919日の「日米合意」に対し、次の様に指摘している。
「森本敏防衛相と玄葉光一郎外相は19日、官邸で記者会見し、「オスプレイの運用の安全性は十分確認された」と、事実上の安全宣言を発表した。
'
安全性が十分確認された'とは、よくもまあ言ったものだ。事故が起きたとき、一体誰が、どのように、責任を取るつもりなのか。
 できるだけ規制を設けず自由に運用したい米軍と、地元説得のため目に見える規制を打ち出したい日本政府。今回、日米合同委員会でまとまった安全確保策は、あれやこれやの合意事項を集め、努力の跡が見えるように繕ってはいるものの、合意内容が順守される保証は何もない。
そもそもオスプレイ配備は、自家撞着(どうちゃく)に満ちている。普天間での運用がほんとに安全であれば、巨額の税金を投じて辺野古に移設する必要はないはずだ。16年前、日米が返還に合意したのはなぜか。市街地のど真ん中に位置する普天間飛行場の危険性を認め、一日も早い危険性の除去と負担軽減を実現するためだ。
なのに、普天間でのオスプレイ運用を「安全」だと強弁し、長期使用を想定して滑走路の改修計画まで立案するのは、自家撞着である。政府の負担軽減策は破綻した。
現在、進行している事態は負担の軽減ではなく負担の継続強化、危険の拡大である。」と。
オスプレイ飛行の「日米合意」なるものは、普天間配備を強行する為の、国民に対する騙し打ちである。今沖縄で、オスプレイ飛行の「合意」破りが常態化しているのは、森本防衛相を先頭に、日本政府の容認の下で行われているからだ。

●止まない、日本本土での、米軍戦闘機の低空飛行による被害

      
△日本における、米軍機の低空飛行訓練のルートと2011年(昨年)の訓練回数。この従来から行われてきた米軍戦闘機の低空飛行訓練ルートは、今回のオスプレイ低空飛行訓練のルートと殆んど同じだ。戦闘機とオスプレイによって、トータルした回数が一挙に増える計算だ。(出処 毎日新聞)

201132日、ブラウンルート上の岡山県津山市で、岩国基地所属の戦闘機2機による低空飛行で、民家の土蔵が倒壊。
○ブラウンルート2011年年929日、島根県浜田市の佐野小学校の真上を岩国基地所属の戦闘機が「操縦士の顔が見えるくらいの高さで飛行。生徒達が、恐ろしさのあまり床に伏し、しばらく言葉が出てこない状態となる。
20102月と6月,F16戦闘機の低空飛行で、ピンクルート上の秋田県大館市で、地鶏300羽が圧死。
19941014日、アメリカ海軍空母インディペンデンス所属の艦載機A-6イントルーダーが、通称オレンジルートと呼ばれる和歌山県南部から高知県東洋町を通り、そのまま四国山脈を飛んで愛媛県に抜け、瀬戸内の岩国基地に帰還する非公式の航空路において、時速約800キロで低空飛行訓練中に早明浦ダム湖面に墜落。搭乗員2名は死亡した。ダムはこの墜落事故で汚染の可能性も指摘。
1999年オレンジルートで、空中給油中、攻撃戦闘機が、土佐湾沖で墜落。
95
99年の5年間だけでも、実に合計68件の被害が記録されている。
1999
年の114の「在日米軍による低空飛行訓練についての合意」説明で、日本外務省は次の様に言明している。
「日本において実施される軍事訓練は、日米安全保障条約の目的を支えることに役立つものである。空軍、海軍、陸軍及び海兵隊は、この目的のため、定期的に技能を錬成している。戦闘即応体制を維持するために必要とされる技能の一つが低空飛行訓練であり、これは日本で活動する米軍の不可欠な訓練所要を構成する。安全性が最重要であることから、在日米軍は低空飛行訓練を実施する際に安全性を最大限確保する。同時に、在日米軍は、低空飛行訓練が日本の地元住民に与える影響を最小限にする。」としている。
低空飛行訓練を容認し、個別具体的な飛行で、「妥当な考慮を払ってくれ」と「要請」しているにすぎない。この日本政府の態度が、やりたい放題の米軍低空飛行訓練を生み出しているのである。
日本政府は、「安全性を最大限確保し、同時に、在日米軍は、低空飛行訓練が日本の地元住民に与える影響を最小限にする。」事をしてこなかった米国に対し、低空飛行訓練を全面的に拒否すべきである。
毎日新聞、726日付で、「この低空飛行訓練に対する苦情は、年間約200300件と絶えず、事故が相次ぐオスプレイの低空飛行訓練には、関係する自治体から強い反発がでているが、日本政府に低空飛行訓練自体を拒否する権限はなく、米側に配慮を要請するしかないのが実情だ。」と指摘した。
野田内閣も、MV22オスプレイの日本国内での低空飛行訓練に対し、航空法は適用されず、航空特例法によって、米軍の低空飛行は制限できないと主張している。
しかし、日米安保条約第6条に基づき、米国に対し「制限が課せられた基地使用」を規定する「地位協定」のその第3条(施設・区域に関する合衆国の権利)において、第3項に、「 合衆国軍隊が使用している施設及び区域(飛行ルートや高度―注筆者)における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」と言う項目がある。「日米合同委員会合意」文書で必ず現れる、米軍の行動への「合意」文書に使用されるフレーズは、ここから出ているのである。
だが「妥当な考慮」を、米軍の判断だけで決定するとは規定していない。
それを日本政府が、妥当でないと判断すれば、「合衆国軍隊が使用している...区域に於ける作業」に制限を設けなければならないはずだ。「妥当な考慮」の具体的な中身と制限項目を示さなければならないはずだ。その為に「日米合同委員会」が存在するはずである。
沖縄米軍基地に、オスプレイを配備する事も、人口密集地帯で、学校の上で、危険な「ヘリモード」や「転換モード」で飛行する事も、日本政府はただ米国に「要請」するだけで拒否する事が出来ないのか?
これらの米軍の危険行為が、「妥当な考慮」として認められるのか?
これ等は米軍の不法行為が、すべて「日米安保条約上の米国の権利であり、日本政府に条約上のマンデート(権限)はない」とは、どこにも書いていない。
安保第6条の「事前協議」に関する付属文書「岸・ハーター交換公文」での、「装備に於ける重要な変更」において、オスプレイの配備が、事前協議の対象である「核兵器及び中、長距離ミサイル...その発射基地に対する装置」に当てはまらないとしても、地位協定における「 合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮 を払って行なわなければならない」と言う項目を盾に、日本政府は、欠陥装備であるオスプレイの配備及び飛行が、自国の国民の生命財産の侵害として拒否すべきである。それが出来なければ、日米安保条約と言う軍事同盟は、国民の生命を守るものでなくそれを脅かし蹂躙するものとして、直ちに破棄すべきである。
主権を持つ国家が、自国の土地に基地を提供し、おまけに経費まで面倒を見てやり、自国の国民の生命財産が侵害され様としているのに、米国に対し物申さない理由はなにか。
野田政権が、日本国民の生活と生命を犠牲にして、米国の軍事的覇権の傘の下で、再びアジアの民衆に対する軍事的威嚇を通して、帝国主義的覇権を築こうとしているからだ。

●沖縄を見殺しにするな!本土6ルートでの低空飛行訓練に反対する闘いと、沖縄の闘いはひとつになる。

9月9日、「オスプレイの配備に反対する県民大会」に103000名が結集した沖縄の住民と、42市町村首長と議会の一致した県民の意思を踏みにじるこの暴挙に対し、926日より、日本政府と米軍に抗議する沖縄の戦いが、101MVオスプレイ普天間配備に抗議する、4つの基地ゲート封鎖を目的とする、座り込み闘争として開始された。
米軍普天間飛行場の大山ゲート前での座り込み闘争では,県警は 政府指示の下沖縄住民300名余とゲートを封鎖した車両16台を強制排除した。しかし排除されても尚、座り込み闘争は繰り返し行なわれていると現地の新聞は伝えている
「ゲート前抗議は、沖縄の反基地運動が新たな段階に入ったことを実感させられる。早朝の集会には連日、県内自治体の首長らが与野党の枠を超えて参加。日米安保を積極的に容認している首長や、米軍基地のない本島南部の首長、議長らも駆けつけ、熱いエールを送っている。抗議運動の特徴は、特定の党派や団体が前面に出ていない点だ。強固な信念と覚悟をもつ「個人」が主体的に集まっている。県民の命を守る闘いとして非暴力を貫く姿勢も共感を集めている。 ゲート前抗議の論点は、もはや「オスプレイの安全性」という枠を超えている。明らかに「普天間閉鎖」要求にシフト、集約されつつある。」(930日付沖縄タイムス)
沖縄県民は、反オスプレイ闘争を通して、「普天間閉鎖」に向かうこの「非暴力の実力闘争」が同時に、東村高江のオスプレイ基地建設と辺野古への新基地建設を断固阻止に向かう連続した戦いである事を我々に示してくれている。
現在まで沖縄県民は、普天間基地の代替え予定地である辺野古に対し、工事杭一本も打たす事を許していない。
これまで日本政府は「オスプレイ配備について、嘘隠蔽を重ねてきた。日米交渉の場で政府は、交渉結果を外部発表する際、オスプレイの表記を見合わせるよう米側に求めた。国会審議でも、知らぬ存ぜぬ、を押し通し続けた。オスプレイ配備の事実は、環境影響評価(アセスメント)の最終段階になって、ようやく評価書の中に盛り込まれた。」(9月20日付・沖縄タイムス社説)のである。
その理由は、現在まで、MV22オスプレイの開発段階から、実戦配備までの事故の頻度と環境への悪影響があまりにも多すぎ、日本配備で世論の抵抗を回避しようと画策したためだ。

●米軍の資料によっても、過去にオスプレイに関連する事故は、量産決定後の200611年の5年間に58件起きている。

19927月、試作4号機が米国エグリン空軍基地からクアンティコ海兵隊基地の着陸直前に右エンジンナセルから出火、機体はポトマック川に墜落、海兵隊員3名と民間技術者4名の計7名全員死亡。
200048日、夜間侵攻での兵員輸送を想定した作戦試験時に墜落事故を起こし、乗員4名と米海兵隊員15名の計19名全員が死亡した。
20001211日、海兵隊訓練部隊VMMT-204部隊所属機(MV-22B)が、夜間飛行訓練中に墜落し、搭乗していた海兵隊員4名全員死亡。事故を受け全機が飛行停止。
(今年では)
20104月、アフガニスタンで夜間戦闘中、CV22が墜落、4人が死亡
20124月モロッコ、死者2人・重傷者2
20126月フロリダ5名負傷
或る日本航空の退職パイロットは次の様に指摘している。「通常双発機は1エンジンの出力が低下しても、他のエンジンがこれをカバーして飛行が可能となっている。また、単発機では出力が低下または停止しても滑空によって相当の距離を飛行し、危険度を減少させる構造となっている。
さらにヘリコプターでは、エンジン停止時にはプロペラの自動回転を利用して、危険度を減少させる構造(オートローテイション)となっている。しかし、オスプレイはそれらのいずれの危険回避機能もなく、1エンジンにトラブルが発生すれば直ちに墜落事故となる危険性が極めて高い。どのような機械でも故障は避けられず、それが直ちに大事故につながらないようにするのが「フェールセイフ構造」というもので、危険度の高い航空機には不可欠だ。しかし、オスプレイにはその思想が欠けている。
また、オスプレイは上昇姿勢から水平飛行に移る際とその反対の時期に、プロペラが斜めになる(転換モード・フライホイール角度の切り替え)時間があり、その時に横風や小さなミスがあると直ちに墜落する恐れのあることもよく知られている。
それが「空飛ぶ棺桶」とか「未亡人製造機(widow maker)」などと呼ばれる所以だ」と。
この「空飛ぶ棺桶」に対し、米国国民は、自国での訓練を環境への影響、騒音、危険度が高いなどとして拒否してきた。
ハワイ・カネオヘ空港へのMV22オスプレイ配備のために、ハワイ島のウポル空港、モロカイ島のカラウパパ空港での離着陸訓練を計画、環境アセスメントを進めたが、モロカイ島のカラウパパ空港は国立公園に近く、遺跡や動植物に影響が出ることを懸念。ハワイ島のウポル空港では、空港周辺の騒音被害を恐れる周辺住民からの反対意見により、両空港での訓練計画を中止した。また今年6月、ニューメキシコ州のキャノン空軍基地のCV22オスプレイの低空飛行訓練も、環境評価(アセスメント)に対する住民意見を受けて延期となった。
米海兵隊は、ハワイでは、公聴会をオアフ島、ハワイ島など五つの公立学校で実施。地域住民の声をネットや電話でも受け付け、騒音被害を受ける地域の自治会を訪ねて、意見を募った。これに対し、防衛省は沖縄へのオスプレイ配備を明らかにして以降、住民への公聴会を一度も開いていない。
米国が、環境アセスメントに対する住民の意見を受け入れて、自国での訓練を取りやめたMVオスプレイを、日本政府は、自国の普天間飛行場の配備に対し、環境影響評価(アセスメント)の最終段階になって、ようやく評価書の中にMVオスプレイ盛り込ませると言う欺瞞的手法を使い、日本国民を欺き、その意思を無視して受け入れると言うのだ。
防衛省は、オスプレイ・ヘリポート基地建設が予定されている東村(ひがしそん)高江でも、配備される機種がMVオスプレイであることが明白になった時点で、地元や住民の意見を聞く機会を持つべきとの高江住民の要求にも拘わらず、環境、歴史的、文化的遺産への配慮も含め、一切無視した。

●米海兵隊が、オスプレイ日本配備に固執するのは、米海兵隊の侵略的軍事行動を更に拡大強化し、事故と墜落の危険、さらには、日本国民の命を無視してでも、その性能に比重を置いた為だ。

オスプレイは、米海兵隊の新鋭装備である。沖縄は、米本土以外では、米海兵隊の唯一海外に於ける基地である。海兵隊の本来任務は、世界各地で米軍の侵略的軍事行動を展開する為の、通称「殴り込み部隊」であり、陸・海・空を通した自己完結型の特殊部隊であることは米軍文書であきらかである。沖縄に駐留する米海兵隊が、「第三海兵遠征軍」と称する意味がそれである。
彼等(米海兵隊)はそのHP(ホーム頁)で、「災害時に於ける救助活動」や「ともだち作戦」を宣伝するが、それは、彼等の基本任務である侵略的暴力集団と言う正体の陰部を、覆い隠すイチジクの葉っぱに過ぎない。
一方で彼等は,そのHPで、オスプレイ配備の目的を明確に「海兵隊の展開能力を格段に向上させ、交戦能力を進化させ、決定的な遠征部隊にする為の装備である」と言明している。「速度、運搬能力、航続距離すべてに於いて、より能力を持つ装備」を追求するためには、(その欠陥装備−オスプレイによって)他国民の生命を危険にさらす事など、一顧だにする価値もないと考えているのだ。
MV22
オスプレイの性能は、米海兵隊の現行CH46シーナイトと比較すると最大速度で約2倍(520km)、行動半径が4倍以上(600km)しかも空中給油が可能の為、さらに伸びる。積載量が約2倍となり、兵士と武器の搭載が倍増され、空中給油の機能によって航続距離を延ばし、米海兵隊の侵略的軍事行動を更に拡大強化するため、事故と墜落の危険を無視してでも、その性能に比重を置いたのだ。
こんな米国の態度に対し、日本の玄葉光一郎外相が、オスプレイの配備理由として、1771年に八重山・宮古地方で発生した「明和の大津波」を持ち出し、津波災害への人道支援に「活用できる」からオスプレイが必要だと発言し、「ともだち作戦と災害救助の為のオスプレイ」と言う、赤ん坊騙しの宣伝を、米海兵隊と一緒に唱和した。
玄葉が、災害救助のためと言うなら、沖縄と、日本全国を低空飛行訓練で縦断するオスプレイによって、日常的に危機にさらされる日本国民の命を守るために、オスプレイを直ちに、アメリカに持ち帰れと米国に向かって言うのがすじではないのか。彼はどこの国の大臣なのか?と言う非難の声が、沖縄中に溢れている。
一方で森本防衛大臣も、「安全は確認された。」「(オスプレイは)日本の領土である尖閣を中国から軍事力で守るためにも必要な装備」と主張し、尖閣問題まで利用して国粋的世論を掻き立て、オスプレイの導入を正当化する根拠に利用している。
尖閣や独島は、「'無主の地'を日本が'先占'した、国際法上正当な日本の領土」と言う主張は、欧・米・日帝国主義列強が、アジアの諸民族を武力で抑圧し、中国大陸と朝鮮半島の植民地分割戦争をしていた時代を、帝国主義列強のの側から正当化したものである。
明治政府による中国・朝鮮侵略時、「国際法」とは、帝国主義列強による、被抑圧国や植民地の分捕り合戦の取り決めに過ぎない。こんな主張は、日本帝国主義のアジア侵略を正当化し、その再現を、米国の軍事的傘の下で狙う、軍国主義的戯言(たわごと)だ。
米国には奴隷の様にへつらい、アジアの民族には、居丈高に攻撃的な態度を示す日本政府は、アジアの諸民族の物笑いの種である。

●米海兵隊と在日米軍は、日米安保条約によって制約された基地使用をさえ逸脱し、日本の基地を、全世界に対する帝国主義的侵略戦争の拠点として利用している

「日米安保条約」は、日本国憲法の下で、6(○在日米軍の行動領域の制約―いわゆる極東条項、○装備と配置に於けるー事前協議、米国による日本の施設・区域の使用規定―基地使用、および国連との関係に於いて、条約の廃止も有りうることを定めた一つの国際条約である。これは「米軍」を、この法の厳格な枠と制約の中でしか、その存在を許されないものとして規定しているはずだ。 
アメリカは、湾岸戦争、アフガン侵略、イラク侵略に対して、沖縄を中心とする在日米軍基地を、この法の制約を無視し世界への出撃基地として利用して来た。何よりも、この米軍の先兵として日本の基地から世界各国の戦争に出撃しているのが、米国が唯一、本土以外に基地を置いた<米海兵隊>である。これは明らかに、この国際法(日米安保条約)さえも蹂躙する無法行為である。
米国と日本は、安保条約の法の枠組みを踏みつけながら、自衛隊と在日米軍の国際的な戦争行為のための全面的な協力関係に向けて、日本の「関連法の整備」を、米国の政策と整合させながら協議を重ねてきた。
武器三原則の見直しや、「有事」を想定した自衛隊との協力体制、基地の協同使用、民間施設の供用など、日本の平和憲法の理念と条文の規定から容認され得ない、法の蹂躙が行われてきた。
1996
年、日米首脳会談において、日米安保協力指針(ガイドライン)の見直しが行われ、安保条約の適用範囲を、「極東」から、「 アジア太平洋」に拡大したのを始め、20052月、日米安全保障協議委員会。200510月 日米両政府による在日米軍再編の中間報告を通して、自衛隊と米軍による集団的自衛権の行使の準備態勢がつくられつつある。

このような,在日米軍の再編と前後して、国内における平和憲法体制を根底から否定し、自己の軍事国家化への準備、および在日米軍 と自衛隊の違法行為の「合法化」を図る法の整備を、強行してきた。

特に200110月 テロ特措法は、ニューヨーク9.11テロに便乗して作られた、正真正銘の米軍支援法であり、日本国憲法はもちろん、安保条約の制約さえも根底から破る不法な法律であった「アフガン復興支援」の名分で、戦後初めて戦闘地域に武装した戦艦を送ると言う重大な違法行為による法律を、たった9日間の国会討議で強行した。

2008
417日、名古屋高等裁判所民事第三部、青山邦夫裁判長が、航空自衛隊による多国籍軍のバグダットへの兵員移送が、憲法91項に違反すると判決した事実は、日米安保条約と言う軍事同盟の存在が、日本の平和憲法体制を根本から突き崩す元凶である事を思い知らされる。
沖縄県民のみならず本土住民も巻き込むであろう、米海兵隊オスプレイの配備を撤回させる戦いは、国民の生命よりも日米軍事同盟の強化を重視する日本政府に、安保条約の廃棄を迫る闘いへ発展していくに違いない。()