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(民衆闘争報道/ 論考「朝・米首脳会談の主要議題は何か」 2018年4月13日)


[論考]朝・米首脳会談の主要議題は何かその2)
朝・米首脳会談の目的は、米国に対して核威嚇による「対北敵視政策」を放棄させる事にある

                                        柴野貞夫時事問題研究会


これまでの<朝米話>による合意は朝鮮の体制崩策する口先だけの「空約束」だった

我々は、<論考1>で、朝鮮を訪問した南朝鮮特使と朝鮮との間で確認された「北南合意・マスコミ発表文」から、その直後、南朝鮮特使とトランプとの間で確認された朝・米首脳会談の基調テーマを、次の様に予測分析した。
  北南合意文で言う、「朝鮮半島の非核化」は、全朝鮮半島とその周辺の非核化であって、「北の非核化」を意味するものではない。
  合意文第4項は、朝米首脳会談の主要議題が、「朝鮮半島の非核化」や「北の非核化」ではなく、“非核化問題の協議、および米朝関係正常化に向けて、米国と虚心坦懐な対話をする”と規定している。
  この事は、朝鮮半島における両国の敵対関係の解消と関係正常化の道筋の中で、双方の核軍縮を含む「朝鮮半島の非核化への道筋」を協議する場である事を示唆している。 
  既存の北の核兵器と弾道ミサイルを問題とする場ではない。

一言で言えば、我々は、5月に予定される朝・米首脳会談の中心テーマこそ、米国が朝鮮戦争休戦以来固執してきた、その核威嚇を軸とする「対北敵対視政策」の放棄させる事にあると考えている。
主権国家に対し、あらゆる国際法を踏みにじって、その体制崩壊を画策し、そのの存在自体を否定し、極悪非道な核攻撃を政策化する国家―米国との間に、果たして真正な「対話」や「協議」が成り立つものだろうか。我々は、決してそうは思わない。
我々は、世界の資本主義言論と「国際世論」が捏造し歪曲して来た、朝・米の「対話」の歴史、即ち、1994年の朝米ジュネーブ合意から2005年の「9.19合意」に至る「朝米対話」による合意が、米国による<朝鮮の体制崩壊を前提とする空約束>であった事実を想起しなければならない。
朝鮮に対する核先制攻撃を公然と政策化して来た米国が、それを実行に移し得なかったのは、朝鮮と米国の軍事的力関係が理由でなく、朝鮮半島の地勢的条件が、半島全域と日本列島に、甚大な被害を生み出すだろうと言う消極的計算からである。
敵対する帝国主義者の心根を、人間の心で受け容れる事は絶対に不可能である。彼等と対等に<対話>する条件は唯一つしかない。
即ち、彼らの暴力に対抗し、それを抑止する軍事的政治的力関係において対等な力を確立することである。対等でなければ、「六か国協議」の結末が示す様に、<対話>は、実行の伴わない‘言葉としての空約束’と言う一方的なものに終わらざるを得なかった。


米帝国主義との<対等の話し合い>は、軍事的力関係によってのみ保障される

<朝鮮半島の核>を巡って、米国は一貫して、朝鮮を国際社会における「反社会的国家」としてデッチ上げ、「制裁と圧力で」その崩壊を画策、<朝米交渉>での<合意>は、朝鮮崩壊までの<口約束>にすぎなかった。米国が《対北敵対視》政策に固執した理由は、ここにある。これまでの、朝米対話における米国の傲慢不遜な態度は、両者の政治的・軍事的力関係によって説明出来るのである。
米帝国主義を屈服させる力は、敵対する相手との対話の頻度や、対話の技術にあるのではない。現代戦における絶対的軍事力の根幹である、核と、核を搭載した大陸間弾道ミサイルによる米帝国主義に対する自衛的軍事的力量が無ければ、米帝国主義との対等の<話し合い>や<協議>は成り立たない。
朝鮮は、1129日、米全域を射程圏内に収める能力と、核弾頭搭載の技術的課題も確立した「火星15号」試験発射に成功した。朝鮮と米国との間に、<軍事的均衡>が出来上がった瞬間である。
米国の今日までのMD防衛体系では、朝鮮の自衛的弾道ミサイルを防ぐ事は出来ない。50%の確率もない現在の米国のMD防衛体系では、朝鮮の弾道ミサイルを防ぐ事は出来ない。朝鮮の核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイルが、米国本土において100%防ぐ事が不可能となって、米国とトランプの、朝鮮に対する<先制核攻撃政策>は破綻せざるを得なくなった。
朝鮮が米本土全域をカバーする核搭載・大陸間弾道ロケットの完成〈核武力の完成〉は、米国に対する軍事的均衡を確立した事を意味し、米国とトランプが、朝鮮に対する侵略的核先制攻撃を実行するカードを完全に失った事を意味している。
トランプが、朝米対話を無条件で応じる事となった意味は、彼が表向き強がって主張するような、「北に対する制裁が効を制した結果」などではない。トランプにとって、米国本土への脅威が《無防備になる事》に対する対応こそ、最優先の課題として設定されているのである。

朝鮮の米国に対する<軍事的均衡の確立>は米国の<対北敵視政策>を破綻に追い込んだ

 

朝・米首脳会談の行方を前にして、日本の資本主義言論は、混乱した<分析>で混迷を深めている。その第一は、意図的に悪意を込めた《朝鮮半島の非核化》を巡る分析(主張)である。彼らは、《朝鮮半島》の《非核化》を、《北朝鮮の非核化》だとして、意図的に騒ぎ立てている。そして“北朝鮮に非核化の意思はあるのか”と自問し、《朝鮮半島》全域の非核化を、《北》だけの一方的な核放棄にすり替えて世論を誤導している。
この様な主張は、朝鮮半島の「核問題」を生み出した張本人が、他でもなく米帝国主義である歴史的事実を歪め、今日、朝鮮半島と日本を含む、極東周辺に持ち込まれている米国の膨大な核兵器こそが、今日の朝鮮半島の核危機を生み出す元凶である事実を隠蔽する。60有余年に亘る米国の核威嚇によって、国家と民族の存亡の危機に晒されてきた被害者である朝鮮を、加害者にすり替える欺瞞を世論化して来た。
この様な主張は、朝・米首脳会談の基調となる、<朝・南朝鮮―合意文>の第3項《北側は、韓半島非核化の意志を明確にし、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消されて北朝鮮の体制安全が保障されれば、核を保有する理由がないという点を明確にした。》と言う論旨を全く歪めるものである。
この<合意文>は、言い換えれば、「北に対する軍事的脅威となる、米国の朝鮮半島とその周辺の、通常兵器を含む核兵器の撤去に関する協議」の状況次第によっては、‘相互の検証を伴った自国の核の放棄’について協議する用意がある」と言う意味である。
<朝・南朝鮮―合意文>の第4項《北側は、非核化問題の協議,及び米朝関係正常化に向けて米国と虚心坦懐な対話ができるという用意を表明した。》は、<北の非核化>や、<朝鮮半島の非核化>ではなく、<非核化問題の協議>として提示している点に注目しなければならない。朝鮮半島を巡る平和体制への道筋は、「非核化」論議が前提となるのではなく、米国との関係正常化を通して敵対関係を解消する事が前提となる事を示唆していると解釈しなければならない。
朝鮮は、<朝・米首脳会談>を通して、朝鮮半島を巡る核戦争の危機に警鐘を鳴らし、単に朝鮮半島のみならず、米国の核軍事要塞となっている日本を含む、東北アジアの核戦争体制の解体を見据えながら、そこでの米国と日本の、侵略的帝国主義的覇権主義を牽制しつつ、外交的勝利を目指している。力関係を背景とする朝鮮の外交的駆け引きは、勝利する多くの条件に支えられている。
朝鮮は、トランプを、無条件の<朝米対話>に追い込んだ、既存の絶対的軍事力の根幹である、核と核を搭載した大陸間弾道ミサイルによる、米帝国主義に対する自衛的核軍事力を、米国より先に、決して放棄する事はない。

朝鮮は「朝鮮半島の非核化」の為の「原則」を次の様に明示している

朝鮮は、201676日<共和国スポークスマン声明>で次の様に指摘している。
「米国と南朝鮮当局が、朝鮮半島の非核化に一抹の関心でもあれば、次の様な我々の原則的要求から受け止めるべきである。
第一に、南朝鮮に引き入れておいて、肯定も否定もしない米国の核兵器から、すべて公開しなければならない。
第二に、南朝鮮で、全ての核兵器とその基地を撤廃して、世界の前に検証を受けなければならない。
第三に、米国が、朝鮮半島とその周辺に随時展開する核打撃手段を、二度と引き込まないと言う事を、担保しなければならない。
第四に、その如何なる場合でも、核で、核が動員される戦争行為で、我々を威嚇恐喝したり、我が共和国に反対して核を使用しないと言う事を確約しなければならない。
第五に、南朝鮮で、核使用権を握っている米国の撤収を宣言しなければならない。 
米国と南朝鮮当局が、真に朝鮮半島の非核化と核兵器無き世の中、平和な世界を目指すなら、この様な朝鮮の正当な要求を受け入れる事が出来ないどんな理由もないだろう。
この様な安全保障が実際に成し遂げられるなら、我々も、それに合致する措置を取る事になるだろうし、朝鮮半島の非核化実現で画期的な突破口が開かれる事になるだろう。

 

<参考サイト
☆論考/朝・米首脳会談の主要議題は両国の関係正常化の一括合意であり、その先に「朝鮮半島の非核化」を実現する事にある(1) (柴野貞夫時事問題研究会 2018年3月28日)

http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_jousei_62.html

☆論考/「社会主義・朝鮮の崩壊を妄想し、67年間に亘って核威嚇を繰り返してきた米帝国主義の対北政策の敗北」(柴野貞夫時事問題研究会  20171210日)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_jousei_60.html

 

☆世界を見る−世界の新聞/「新年の辞」 朝鮮労働党委員長・金正恩 (朝鮮中央通信 2018年1月1日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_605.html

☆論考/「安倍・国連演説の欺瞞を徹底批判する」 (柴野貞夫時事問題研究会 2017年10月6日)

http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_jousei_59.html