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(韓国民衆ネット言論 統一ニュース 201462日付)http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=107529

 

朝・日合意が示唆するもの

−安倍総理が中国、韓国と、領土また歴史問題で葛藤を引き起こす状況で、
北韓を突破口としたと言う解釈も出る−


 
 

チョン・チャンヒョン
 

北韓と日本が、日本人拉致被害者調査と対北制裁解除に合意したと、529日電撃発表した。北韓は、国防委員会の合意(推定)を経て、<朝鮮中央通信>報道形式で、日本側からは安倍総理と岸田文雄外務相、菅ヨシヒデ官房長官、古谷ケイジ拉致問題担当相が参席した閣僚会議を開いた後、ヨシヒデ官房長官が直接記者会見を通して発表した。

●‘秘密作戦’を連想させた合意

周辺諸国の‘妨害’を意識してなのか? 今回合意を引き出したスエーデン・ストックホルムで開催された北・日外務省局長級会談(526日〜28日)は、‘秘密作戦’を連想させた。北韓が要請し決定された会談場所からそうだった。

会談が終った後、言論の最初の一報は、特別な成果なく終ったと言うものだった。北韓は合意内容に対し、周辺国に最初から事前通報をしなかった。日本は29日発表直前になって、初めて韓国と米国に通報したものと分かった。

北韓は今年に入って、ピョンヤンにある日本人遺骨の調査並びに返還問題を提起し、北・日会談再開に積極的な姿勢で出始めた。去る320日の中国遼寧省・瀋陽で開かれた、北・日間の赤十字社実務会談と外務省課長間の非公式協議で、両国は、“真剣で率直な雰囲気の中で深度ある対話を進行”し、“重要な一歩”を踏み出した。これを土台に33031日には、安倍政権出帆(201212)以後はじめて、北・日当局間の会談が開かれた。

北韓は、“過去と異なる環境と条件”、即ち“国際情勢が大きく動き、6者会談に参加した国々の力学構図、地域の国際関係が急変”していると言う評価に基調して、北・日当局間の会談に臨んだものと伝えられる。しかし、当時までさえ、北・日会談の成果は不透明だった。会談過程で、北韓側は、拉致問題が完全に解決されたと言う既存の立場を固守していたし、日本が、韓・米・日−共助が維持される中で独自的に対北経済制裁を緩和する措置を取る事が出きるかも疑問だった。

●互いに異なった、北韓と日本の利害関係
−国交正常化の意思を再び明らかにし、二度も ‘ピョンヤン宣言’に言及

従って、今回の北・日間の協議は、二つの変化する変数が作用したと言う事が出来るのだ。

一番目に、南北関係と北・日関係を同時に進めようとした北韓が、2月、南北高位級会議以後、南北関係がむしろ緊張局面にはいるや、北・日会談に一層集中する事になったと言う点だ。北韓としては、日本が要求する拉致被害者再調査のカードを活用し、韓米日共助を弱化させる必要性があったのだ。

二番目は安倍総理の立場の変化だ。昨年4月、飯島勲 日本内閣官房参与・諮問役を北韓に特使として送り、北・日―修交協議再開などと関連した事務的協議を全て終えた安倍総理が、最近、北・日関係改善に積極的な態度で振り返ったのだ。

日本の或る新聞記者は、“安倍総理は、いつでも条件さえ充足されれば北・日―首脳会談をする意思があると言う点を何度も表明した”とし、“首脳会談に強い意志を持っていた安倍総理が、北韓の変化した態度に決断を下したものと見える”と、評価した。安倍総理が中国、韓国と、領土また歴史問題で葛藤を引き起こす状況で、北韓を突破口としたと言う解釈も出る。

北韓と日本の、互いに異なる利害関係がきっちり合いながら、今回の合意が導き出された計算だ。去る3月、筆者が日本を訪問した時、日本の政府関係者が北・日関係改善の可能に対し、集中的に質問を投げた。当時三つの側面を強調した

最初にキム・ジョンウン時代、北韓は‘過去の遺産’から抜け出そうとしており、韓国・米国・日本と同時に対話を進めようと言う‘包括的世界戦略’を駆使している為に、日本が北韓側に信頼こそ与えれば、拉致被害者問題を解決する事が出来る。

二つ目に北韓の立場では、2002年の‘ピョンヤン宣言’が遺訓として残っているために、日本側が北・日会談を進展させる為には‘ピョンヤン宣言’の履行と首脳会談の可能性を示唆しなければならない。

三つ目に、会談の実質的な進展の為には、外務省ラインではない他の接触窓口を準備しなければならない。

日本政府は、既にこのような側面を考慮していた様だ。今回の合意を通して日本は、“朝日ピョンヤン宣言に従い、不幸な過去を清算し、懸案問題を解決し、国交正常化を実現する意思を、再び明らかにし、日朝間の信頼を作り上げ関係改善を指向し、誠実に臨む事と”したし、“在日朝鮮人の地位と関連した問題に対しては、朝日ピョンヤン宣言に従い誠実に協議して行く事とした”と明らかにし、二度も2002年の‘ピョンヤン宣言’に言及した。

更に、日本の<日本経済新聞>の報道によれば、北韓はストックホルムで開かれた会談に、国家安全保衛部の人士を参席させた。この新聞は、複数の日本政府関係者を引用し、今年1月以後、本格化した北韓と日本の非公式協議で、国家安全保衛部当局者が、日本との窓口機能をしたと報道した。外務省とは異なる通路を持っていたわけだ。

● 核心は、北核問題と、北・日関係を分離した事
−(合意文は)徹底して、両国の関係改善と懸案解決にだけ、限定されている。

しかし、今回の北・日間の合意過程で注視しなければならない一節は、日本が北核問題と北・日関係を分離し、接近したと言う点だ。即ち、この支点で北韓の柔軟な態度を引き出す事が出来た。 

今回の合意を通して、北韓は日本人拉致者問題と関連、包括的調査の為の‘特別調査委員会’を構成、調査を開始する事として、これと同時に日本政府は、人的往来規制、送金また携帯金額関連特別規制措置、人道主義目的の北韓船舶の日本入港禁止措置を解除する事とした。更に日本側は該当合意の履行の当否によって、‘適切な時期’に北韓に対する人道的支援の実施を検討する事とした。

北・日会談過程では、北核問題が取り上げられたかも知れないが、合意文について見ると、北韓と日本は徹底して、両国の関係改善と懸案解決にだけ限定されている。北韓に対する制裁も、日本側の独自的なものだった為に、解除しても形式上国連安保理の対北制裁決議とは、衝突しない。そのため今回の北・日合意は履行の可能性が高いと見る事が出来る。

まず、容易く解く事ができる問題は、太平洋戦争当時、北韓地域に駐屯した日本軍と、終戦後帰国しない人々など約2万余名の遺骨調査、また墓域の造成である。今回、北・日合意で北韓は、日本人遺骨と墓地処理、墓参訪問などを協議、必要措置をする事としたし、日本側は日帝強占期当時の朝鮮人行方不明者に対する調査を実施し、関連対策を準備する事とした。

北韓には、終戦前後の混乱状況で死亡した日本人の埋葬地が、約70箇所あるものと知られており、現在まで埋葬が確認された所はピョンヤン郊外の‘リョンサン墓地’など5~6箇所程度と伝えられる。これ等日本人遺骨に対し、北韓は返還意思を明らかにしたが、日本側は返還より北韓地域に日本人の墓域を造成し、家族達が墓参する方式を好んでいる様だ。

日本の遺骨調査と返還作業に関係して来た日本の東京大・ 和田春樹名誉教授は、“日本政府は、太平洋戦争が終ったあと、他の国に埋葬されている日本軍の遺骨を発掘、送還した事例が殆どない”とし、“北韓地域に散らばっている日本人遺骨も、送還よりは北韓の特定地域に集め、共同墓域を造成し、家族達がここに、自由に墓参に行く事が出来るようにする方になるだろうと予想する”と明らかにした。北韓も今後、北・日関係を考慮しても、敢えて拒否する理由がないと言うのが彼の見解だ。

難題はやはり、拉致被害者と行方不明者問題だ今回、北・日合意で北韓は“日本側が過去時期、拉致問題に関して傾けてきた共和国の努力を認めた事に対し評価”しながら、“従来の立場はあるが、包括的で全面的な調査を進め、最終的に日本人に関する全ての問題を、解決する意思を表明”した。

拉致被害者と行方不明者に対する全面再調査と送還を要求した日本の要求を、北韓が全面受け入れしたのだ。

特に、全ての対象者に対する調査を具体的に真剣に進める為に、特別な権限(あらゆる機関を対象に、調査する事が出来る権限)を付与された‘特別調査委員会’を構成する事に合意した事は、極めて破格的な措置として評価される。

無論、2008813日開かれた6者会談の、北・日国交正常化実務会議で、北韓が日本人拉致被害者再調査の為の委員会の構成に同意したが、対話派である福田康夫総理が退き、対北強硬派の麻生太郎総理が登場して霧散された事例がある。

その為、今回合意された‘特別調査委員会’の構成は順調であろうが、具体的な活動は、日本の対北制裁解除、日本国内の政治状況、安倍総理の訪北などと連携され、順次的に成し遂げられるものと予想される。また、拉致問題調査が合意通り成し遂げられても、北・日関係正常化までは相当な時間が必要だろう。北・日、南北関係の改善速度と歩調を合わせる可能性が大きい為だ。

北韓は、国内外の要因で安倍総理のリーダーシップが揺れるまでは、今回の北・日合意を履行して行くものと見える。

 中国と北韓が、韓・米・日協調に亀裂をつくる
−外交に非常灯がともったのに、パク・クネ政府は依然として‘韓・米・日3国協調’に基づいた<対北圧迫メッセイジ>だけを強調している

興味深い点は、去る325(現地時間)、ハーグの韓・米・日首脳会談と、4月オバマ大統領の日本、韓国巡訪を通して、韓・米・日三角共助(協調)が強化される時点で、これを弱化させる為の中国と北韓の‘攻勢’が始まったと言う点だ。

中国は、526日、王毅外交部長の訪韓を通して、米国と中国の間で‘均衡外交’を標榜していたパク・クネ政府が、急速に韓・米・日軍事同盟体制に編入されるのを牽制し始め、こんな中国の動きは6月に予想される習近平主席の訪韓を契機に、さらに具体化されるだろう。

パク・クネ政府は、習近平主席がピョンヤンでなく、ソウルを先に訪問するのを、‘外交的勝利’と評価しているが、米国の対中包囲政策が加速化される条件で、悩みが深くなる他はない状況だ。

ここに北韓が加勢し、日本との対話をした段階に格上げさせた。韓・米・日3国の圧迫一辺倒の対北協調に、<亀裂>を生む契機をつくる理屈だ。

韓国と米国は、日本が独自的な、対北制裁緩和方案について、事前に具体的に協議しない事に対し困惑している。(韓国の)高位消息通は、30日、(日本が)どんな制裁を、どの様に解除するかと言う事に対し、韓米両国と事前に合意したことはない”とし、“調査を開始すれば、日本が制裁を解除するとなっているが、そんな単純なものなのか、少し日本から説明を聞いて見なければならない”と明らかにした。

そして日本に“透明な北・日協議”を重ねて強調した。北核問題への協調次元で、日本人拉致問題再調査の問題とかみ合わされた対北制裁緩和時の、独自行動をするのはだめだと言う立場を伝達したのだ。

外交に非常灯がともったのに、パク・クネ政府は依然として‘韓・米・日3国協調’に基づいた<対北圧迫メッセイジ>だけを強調している理屈だ。

パク・クネ大統領も、差し迫るものでもない北韓の第4次核実験に言及し、対北協調と言う<決まり文句>だけを繰り返している。

パク大統領は、528日、米国の日刊紙<ウオールストリートジャーナル>と持ったインタビューで、“また他の核実験をする事になれば、6者会談と言うものも意味が無くなると考える”とし、“6者会談関連国と、非核化、北核不溶を実質的に実現していく事が出来る多様な方法に対し、引き続き協議している”と明らかにした。

しかし、パク・クネ大統領が、依然として韓半島信頼プロセスの稼動を念頭に置いているなら、今回の北・日合意は、南北関係改善の為の最後の機会となるすべもある。北・日協議を‘新しい悩みのタネ’と把握するのでなく、対北政策の修正を要求する声が高くなった状況を活用し、対北政策転換の契機とすることだ。

その為には、どんな独自的対策もなく、北核協調だけ強調するのではなく、北核問題と国内の懸案を分離し、合意を引き出した安倍総理の対北政策を、他山の石としなければならない。北核問題と南北対話を分離しなければならないのだ。

特に、ハーグ首脳会談以後、露骨的に南北対話を牽制して出た米国の圧迫も、北・日合意で弱化されると言う点も適切に活用しなければならない。

こんな時点で、パク・クネ大統領は、対北強硬発言で一貫しているキム・クアンジン国防長官を国家安保室長に任命した。外交力が必要な時点で、不適切な人事ではないのか。中国と北韓の、韓・米・日の対北強調の動揺にパク・クネ政府がどんな選択をするのか気がかりだ。

(訳 柴野貞夫 201466)

 

 

論考「ピョンヤン宣言の履行を10年間も放置する事を正当化する如何なる理由もない」(2012年9月17日)


論考「日本政府は<拉致問題>が決着済みであることを隠蔽している」(2012年5月20日)


民衆闘争報道−朝日関係に関する朝鮮民主主義人民共和国外務省との会談記録(1) (2012年5月12日)

民衆闘争報道−朝日報道に関する朝鮮民主主義人民共和国外務省との会談記録(2) (2012年5月25日)

民衆闘争報道−朝日報道に関する朝鮮民主主義人民共和国外務省との会談記録(3) (2012年6月1日)