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(韓国民衆言論 チャムセサン 201499日付 原文―英紙ガーデアン)http://www.newscham.net/news/view.php?board=news&nid=79934&page=1&category1=38


              NATOは平和でなく戦争を挑発してきた


                                          シモーズ・ミロン(ガーデアン掲載論文)



<チャムセサン編集者注釈>
ウクライナ政府と東部反政府勢力間の休戦協定で、クライナ事態は表面的には緊張が緩和された格好だ。しかしロシアは、同じ期間行われたNATO首脳会議の結果により、最大の軍事的危機に直面する事となった。
NATO首脳会議は、‘ロシアの脅威’に対抗した4千名規模の迅速対応軍創設に合意して、これに先立ち、英国などヨーロッパ7カ国は合同遠征部隊創立のための協定に署名した。米国主導の対ロシア経済制裁に、ヨーロッパ連合も、より積極的に乗り出しており、それ以外にもウクライナ政府はNATOメンバー国から軍事支援を受ける計画だと明らかにした。西欧は、ロシアに対し戦争を止める為の措置だと主張するが、中東、東ヨーロッパ等での軍事危機と衝突について報道して来た英国<ガーデアン紙>のシモーズ・ミロンは、NATO創立時期から現在までを振り返って、最近の措置だけでなく、NATOは最初から戦争を触発させて来たと指摘する。

<本文>


NATO事務総長ラスムセンは“イラクが大量殺傷武器を持っている”と主張した人物


ウクライナは、当初、衝突を触発させた西欧の軍事同盟に引き込まれたものと考えられた
西欧の戦争の対価に、ウェールズでのNATO(北大西洋条約機構)首脳会議は適当な時期に開かれた。自身の存在理由を説明する為に苦闘した軍事同盟体-NATOは、去る45日に開かれたこのニューポート首脳会議の為の議題を繕ってきた。
NATOが、中東に対する介入を増やして、所謂<イスラム国家(IS)>を除去しようとするボラク・オバマ米大統領とデービッド・キャメロン英首相の計画の中心に(この首脳会議の目的が)ある様に見えない。しかし、この西欧の同盟(NATO)は、アフガニスタンに対する13年間の流血占領とリビアに対する災難的介入の後で、少なくとも、収支勘定を出す様に見える一つの敵を持っている。
三日前、米国大統領は、前ソビエト共和国・エストニアを揺さぶり、‘ロシアの攻撃’からヨーロッパを防衛する用意がある‘と宣言した。
アネルスポグー・ラスムセンNATO事務総長は、ロシアがウクライナを侵攻したと主張する衛星写真を公開した。ラスムセンは、2003年デンマーク首相だった時“イラクが大量殺傷武器を持っている”と主張した人物だ。英国首相は、これを支持したくない様なプーチンを、ヒトラーに喩えた。
NATO首脳会議は、ロシアを抑制する為に、東ヨーロッパ全域に駐屯させる<迅速対応軍>を計画している。英国は、訓練の為という名目で、ウクライナに軍隊を派遣した。ワシントンでは議会タカ派は、(ウクライナとロシア間の)緊張緩和の知らせに、びっくり仰天して、ウクライナがロシアに抵抗する事が出来る様に、もっと多くの戦闘力を支援する事が出来る措置を要求している。
ウクライナ大統領が休戦に合意し、葛藤が終息される手もあると言う希望が生まれたが、米国の寵愛を受けるアルセニー・ヤッチェニク首相は、ロシアを‘テロ国家’と表現しながら、災いを撒き散らした。彼は、NATO事務総長の‘調子に合わせて’ウクライナのNATO介入が許容されなければならないと主張した。

NATOは米国主導の新しい世界秩序を守護してきた

大多数のウクライナ人と、当初この危機を触発させた彼等が選出した政府(失脚したビクトール・ヤヌコビッチ大統領の政府)の反対にも拘わらず、ウクライナがロシアに敵対的な軍事同盟に巻き込まれる事は、(ロシアに)明白な脅威だった。
NATOは、平和を守るどころか緊張と戦争を拡大して来た原因だった。これは、NATOが、ワルシャワ条約機構(ソ連など東欧圏8カ国軍事同盟体)が創立される6年前に、冷戦が絶頂に至った1949年に創設され、自称‘ソビエトの脅威’に立ち向かった防衛条約として創設されてから、してきたやりかただ。事実ソビエト連合が攻撃を意図したことがあると言う証拠はなかったが、この同盟は40年の間、ヨーロッパで平和を守ったと主張する。
ソ連崩壊後、ワルシャワ条約機構は正式に解散された。しかし、NATOは自身の存在に関する表面的な理由を失ってしまったにも拘わらず、その様に(解散)しなかった。平和が目的だったら、NATOは国連の後援の下で、ロシアを含んだ集団安全保障の方式で有用に変化することが出来たであろう。
代わりに、NATOは、ユーゴスラヴィアからアフガニスタンとリビアまで、一方的な戦争を遂行する為の‘地域外の’新しい任務を自らに付与して、この様に前進しながら米国主導の新しい世界秩序を守護した。ヨーロッパで、NATOは、米国のモスクワに対する約束を破り、最初は前ワルシャワ条約機構に、次には旧ソビエト連合自体に膨張しながら、ウクライナ戦争の基盤を作り上げてきた。
しかし、米国が資金を援助する‘民主主義のための国家基金’の首脳部が昨年指摘した様に、‘最も大きい褒賞’は、人種的に分離されたウクライナだった。ヨーロッパ連合が、ロシアとの協議は除外したまま、ウクライナと軍事的に連携された条約を結んだ後―そして、これに対する署名を拒否した、腐敗はしたが選出されたウクライナ大統領は転覆されて−その隣の国が受理されたことを、自分の核心利害に対する脅威だと看做したことが、ロシアの被害妄想だけではなかった。
6ヶ月の間、モスクワが後援したウクライナ東部抵抗軍と、NATOが後援するキエフ民族主義者間の衝突は、全面的に拡大した。数千名が死亡し、双方全て多様な人権侵害を犯した。政府軍と支援部隊は、民間人地域を爆撃し、分離主義だと疑われる彼等を、大量に拉致、拘禁し拷問した。

NATOは平和でなく戦争の原因

西欧の政府が後援するウクライナ軍には、戦時のナチ突撃隊員の狼の鉤を象徴として使用する、ナチのアゾフ大隊の様なグループ(訳注参照)が加担している。次第に、更に抑圧的に変わっているキエフ政権は、今、過去の総選挙で13%を得たウクライナ共産党を禁止しようとしている
しかし、NATOは決して民主主義を強調しない。NATOの過去成員に、ファシスト政府も種々あったのだ。ロシア軍が、ウクライナ東部を侵略したと言うNATOの主張の証拠も少ない。特殊部隊と国家支援の非正規軍を含むドンバス抵抗軍に支援した武器と秘密介入は、別の問題だ。
しかしこれは、正確に、米国・英国・フランスの様なNATO列強が、ニカラグアからシリアとソマリアまで、数年の間、世界到る処で忙しく遂行してきた事そのものだ。ロシアが、ウクライナで新しい形態の‘混合された戦争’を開発したと言う考えは、道理に合わない。ウクライナでのNATOとロシアの代理戦争が、醜いことも、危険なことも無いと言うのではない。
この危機を触発したのは、ロシアではなく、NATOとヨーロッパ連合だと、プーチンのオルリガルヒ(訳注-ローマ時代の寡頭支配政治に比喩、ロシアの産業・金融財閥を支配する勢力を指す)的寡頭政治に同情心を持つ必要はない。しかし、意気地なく見えるのが怖くて、唯一の解決方案である合意に抵抗するのは、西欧権力だ。
その様な合意は、最小限、連邦的自治、少数者に対する同等な権利、そして、NATOではない軍事的中立を包含しなければならないだろう。しかし、流血事態の規模と、ウクライナ経済の内部破壊で、キエフの政治的中心が右側に移動しながら、西欧の後援者だけが、利得をせしめている。
クリミア(訳注―20143月、住民投票によるクリミア・セバストポリのロシアへの復帰)の後、(NATO―欧米列強の)代案(選択肢)は、戦争拡大と分裂だ。
NATOは、自身を‘国際的な共同体’と見ることを願う。しかし、事実NATOは、その衛星国に西欧の戦略と経済的利害を強制して来た世界で最も富裕な諸国の介入主義的、膨張主義的軍事クラブだ。ウクライナが見せてくれる通り、平和を守る事とは距離が遠い。NATOは平和に対する脅威である。
                              (朝鮮語の訳文 柴野貞夫 2014918日)

(訳注)

NATOは、ネオ・ナチのクーデターで登場した現キエフ政権を支持した。しかし、ウクライナ軍内部は、現政権を支持しない将兵が多数いる。政権は、対抗手段として、6万人規模の国家警備軍(親衛隊)を編成したが、そのメンバーはネオ・ナチが主体だ。この軍事組織にアメリカの傭兵会社から派遣された戦闘員が加わり、「内務省の軍隊」として機能している

 


<ガーデアン(英文)原文は以下のサイト
http://www.theguardian.com/commentisfree/2014/sep/03/nato-peace-threat-ukraine-military-conflict