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(韓国 社会主義政治組織 <労働者連帯>166号 2016127日付)

http://wspaper.org/article/16777


パク・クネの容易い解雇と、賃金削減の為の政府指針(ガイドライン)を廃棄せよ

−我々は、民主労総の総罷業を完全に支持する


  

  

民主労総は、1月30日、午後ソウル市庁前ソウル広場で、‘労働改悪政府指針阻止!公安弾圧粉砕!総罷業勝利!民主労総全国労働者大会’を開催している。写真―民主労総「労働と世界」より転写。(訳者注―この写真は、「労働者連帯」の写真ではありません)

雇用労働部、労働改悪二大指針発表を強行した

今回の政府指針は、企業主が“勤務成績不振”を名分に、労働者を解雇することが出来るようにする。また、労働組合、或いは、労働者大半の同意なくとも、会社側が一方的に賃金ピーク制(上限制)・職務成果制投入など、就業規則の不利益変更を可能とする。
政府は、これを“公正な人事指針”などと包装するが、政府指針が労働者の身に降りかかる影響は、極めて害悪的だ。


 第一に、政府指針(ガイドライン)は労働者の賃金削減を狙
パククネ政府は、昨年、公共機関で<賃金ピーク(上限)制>を貫徹したのに続いて、今年、製造・金融の大企業を筆頭に、民間部門にこれを拡大すると明らかにした。賃金ピーク制は、勤続によって賃金が上がる年功給制を攻撃する措置の一つで、政府と使用者達は、これを梃子にして賃金体系全般を、<成果>による賃金支給方式で改変しようとする。
経済危機が、長期化・深化する中で、賃金の費用負担を減らそうとする支配者達に、これは死活的な課題だ。
<成果>による賃金支給は、労働者達を<成果競争>に駆り立て、団結を困難にし、労働者を分断させると言う点でも害悪的だ。

政府指針が“解雇に(資本にとっての)安全装置を作ろうとするもの”と言う図々しいパククネの攻撃を、しっかりと防がなければならない。(写真・チョ・スンジン)

 第二に、政府指針は労働者を<成果>によって選別し、雇用も脅かす
深刻な経営危機が無くとも、使用者達が何時でも、必要に応じて‘低成果者(チョソンクァジャ)’(訳注―韓国の資本家とパククネ政権は、この労働改悪二大指針で、企業において10%〜5%居ると、彼らが考えている、「成果を出せない労働者」を、‘低成果者(チョソンクァジャ)’と言う差別用語を使い、Cプレイヤーと規定、首切り自由な対象と考えている。)を解雇出来るようにして、常時的な解雇の可能性を開いてやる為だ。これは、使用者達が、労働者を統制する事も容易にできる手段となるものだ。
過去に、KT(韓国最大の通信企業),外換・国民銀行などで、「低成果」を口実に、職務を奪い、特殊部署に発令し、退職を圧迫した事例を見れば政府の主張と異なり,‘極少数の不誠実労働者’の問題ではなかった事を知ることが出来る。
労働者多数が不安とストレスに苦しめられ、賃金削減や労働強度の強化のような攻撃に抵抗するのが、もっと難しいと感じさせたのだ。ただ、こんな攻撃に中の一部は、使用者が法的制約のために意思を遂げることは出来なかった。今回の政府指針は、即ち,こんな制約を取り除こうとするものだ。
要するに、政府指針強行の目標は、深まる経済危機で企業の利潤を保全しようと、労働者階級に苦痛を転嫁するものだ。この為に、労働者に‘低成果者’として烙印を押し、人件費を減らし、常時的な解雇を可能にする条件を作ろうとするものだ。
しかし、本当の‘低成果者’は収益性下落の責任を労働者に転嫁する企業主達、舌先三寸の公約を守ることのないパク・クネ、そして危機から逃れ出るすべが分からない資本主義体制だ。労働改悪は、自分達の‘低成果’の責任を転嫁するための悪辣な攻撃だ。
従って、民主労総が政府指針廃棄を要求し、即刻、無期限総罷業を宣言して出たのは完全に正当だ。パククネ政府は、これを“不法”だと脅迫し、弾圧を強化して出たが、(法務長官、キムヒョンウンは、民主労総の総罷業がISISテロと北韓の核危機を加重させるという荒唐無稽な話までした。)
この闘争が実質的に組織された時だけが、数多い労働者達の労働条件を守ることが出来るのだ。
                                     訳 柴野貞夫 20162

<解説>

国家が恣意的に事実上立法化したも同然な
パククネ政権の<労働改革ガイドライン>

パク・クネ政権の雇用労働部が1月22日に強行発表した、一般解雇と就業規則に関する二つのガイドライン(政府指針)は、使用者が労働条件を始めとする賃金体系を、労働者の同意なしに変更することを指示、常時解雇も可能とするものである。この政府による労働ガイドラインは、既存の労働諸法規を無視して、その上に君臨するものであり、国家が恣意的に、ガイドラインを事実上立法化した様なものだ。日本安倍政権の、憲法の上に立つ「戦争法規」の強行を彷彿とさせる。
これは、賃金と労働条件に対する団体交渉権を事実上無力化するものであり、軍政時代の労働支配へ逆戻りするものとの批判もあるほどだ。イ・ギグオン雇用労働部長は、1月25日、全国の政府機関長会議を招集し、このガイドラインの指示徹底、フォローアップを計ったと韓国各紙は報じている。
イ雇用労働部長は、“政府が労働改革を早急に実施して、仕事の危機を克服せよと言う国民と産業界の要望だ。”と、韓国資本主義の危機の責任を、もっぱら、働く労働者に転嫁する、韓国資本家階級の決意を代弁する事を隠さない。
資本家寄りの韓国労総は、日本の「連合」の様なものだが、パククネの政労協議のメンバーとして「労働改革」の論議に加わってきた。しかし、昨年、12月以降、労使協議への参加を、公式、非公式に拘わらず拒否してきた。特に、政府ガイドラインの「通常解雇」に対し、「合意した事実はない」と反発、自分達の自殺行為になりかねない危機を、感じたと考えられる。
イ雇用労働部長は、記者会見で“この労働ガイドラインが実施できれば、‘誠実な労働者’は、60歳まで成果と能力に応じて働けるだろう。殆どの‘誠実な労働者’は、通常解雇の対象ではない。‘例外的’に業務能力の低い労働者は、この限りではない”と、牙を剥き出した犬のように本音を吐いた。長官の言う、‘誠実な労働者’や、‘例外的に業務能力の低い労働者’の基準は、もちろん使用者(資本家階級)がきめると言うのだ。韓国資本家階級とパククネ政権が、労働者を虫けらのように差別する事を合理化する用語―‘低成果者(チョソンクァジャ)’を使う神経は、資本主義と資本家階級の道義的・道徳的退廃と、人間精神の腐敗を示して余りある。
このガイドラインが、労働組合のない未組織、中小事業所などの労働者には、大きな打撃を与えるのは明らかだ。
韓国労総は、ゼネストを呼び掛けている民主労総と、共同行動に出る可能性がある。しかし、民主労総の「総罷業」は、部分的ストに分散される可能性もある。パククネ政権と韓国資本家階級による暴力的な反撃の予兆は、2015年の11.14−民衆総決起大会に対する国家権力の暴力に示されており、労働運動を、刑事罰と民事上の賠償の対象とする韓国の諸法規によって、戦いが暴力的に弾圧される状況もある。日本の現実も、同じように成ってきたことの自覚も必要である。
日本の「連合」は、既に、現場における資本家階級の、法を無視した労働者に対する攻撃を、諾々と受け入れている。安倍と日本の資本家階級は、「連合」が安泰な限り、いまのままで、思うような「労働改革」が進められると考えている。革命的労働運動の創出が必要な理由である。

参考サイト>

☆ 11・14民衆総決起大会(於・ソウル)−労働改悪・教科書国定化反対に集まった10万人の市民(韓国・ハンギョレ2015年11月14日付)
http://www.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_516.html