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(民衆闘争報道) 「在特会の水平社博物館差別街宣に対する裁判闘争」(2012626日)


奈良地方裁判所 牧賢二裁判長は、「在特会・川東大了」による「水平社博物館」への街宣活動と言動を違法と判決。150万円の賠償金を科す


この勝利判決を、「在特会」による京都朝鮮第一初級学校への襲撃裁判の勝利につなげよう!

                                                [柴野貞夫時事問題研究会]



201112月に開かれた差別街宣を糾弾する決起集会
[
写真出処−時事問題研究会]

●人種差別主義者や、人権侵害者を野放しにしない為に、「在特会・川東大了」を告訴!

極右・人種差別団体である「在特会」は、2011122日、奈良県御所市柏原にある水平社博物館前で、当時館内で開催されていた「コリアと日本―朝鮮併合から100年」と言う企画展示を攻撃する目的で、街宣活動を展開した。
「在特会」はこの日、日本帝国主義のアジア侵略の象徴である「日の丸」を掲げ、「川東大了」を先頭に人種差別と被差別部落民の人権を冒涜する街宣活動を繰り広げた。朝鮮民族の尊厳を踏みにじり日本帝国主義の植民地支配を正当化するばかりか、同時に、これを主催した水平社博物館を対象に「エタ。非人」など、非人倫的言辞を弄ぶ許し難い差別街宣活動を展開した。しかもそれを、彼等のネット上に明け透けに公表し、彼等の非人間的行動を社会的に認知させ様と企んだのである。
日本には、欧州に存在する<差別禁止法、人権救済法>などの様に、人種間の葛藤を焚きつける差別的行動・言質や、その様な目的をもった組織、人間の人権を真っ向から否定する言葉での攻撃から、市民や被抑圧民族を守る法律がなく、人種差別主義者や、人権侵害者を野放しにして来た。
もともと日本社会の中心では、今日に至っても尚、朝鮮民族に対する植民地支配を、歴史犯罪として反省するどころか、それを正当化する支配層の政策が、新たな帝国主義的膨張政策に組みこまれ、国家による国民支配の道具として利用されていると言う構造的現実がある。
「北敵視政策」もその一つであり、被差別部落民に対する、国民同士での対立意識の醸成を煽るのも同じ理屈である。
ここに、他でもなく、自らの責任で生み出した民衆の生活の危機と破たんの捌け口を、人種差別と国民の分裂と対立の利用によって切り抜けようとする、支配層の政策がある。
日本資本家階級とその代理人である野田政権の反民衆的政策によって、生存の危機を迎えている国民が、本来支配階級と戦う側に立たなければならないにも拘わらず、逆に支配階級を支える側に回る構図がここにある。
「在特会」は、今日の日本の危機に戸惑い、行き場を求める若者や中産階級の絶望感を逆手にとって、人種間や国民間の葛藤と対立を煽り、支配階級を支えるエネルギーに転化しようとする企みに他ならない。
その意味では、市民の公務員労働者への対立意識を組織し、自分の意に沿う「第3者機関」と言う御用諮問機関を、あたかも民主主義的組織かの様に装い、市民が選んだ議会を無視している大阪市の橋本市長の行動と「在特会」には、社会的共通性があると言える。かれらは片方の手で、民衆の持つ「既存の」政治組織や資本家階級に対する反感を掬い揚げながら、一方の手では、支配階級と固く結びついて、国民の分裂に手を貸し、弱者を攻撃の的にしている場合が多い事がそれを裏付ける。
日本では、反人権差別街宣が暴力行為を伴わない場合は、犯罪として認められていない。単なる「悪口」だ。「在特会」と川東大了によるヘイトクライム(憎悪犯罪)を、公の場で裁く手立ては何か。
公益財団法人 奈良人権文化財団(旧名称 財団法人水平社博物館)は、在特会・川東大了の行動が、水平社博物館の持つ人権活動の歴史的意義と役割に対して、甚だしく名誉を毀損し冒涜したものであること。それに対する「損害賠償請求事件」として訴えることによって、川東大了を、人権侵害者として、また人種的偏見を国民に煽る犯罪者として、被告席に立たせる事としたのがこの裁判の本質である。

●奈良地裁 牧賢二裁判長は、「在特・川東大了」の街宣活動を<違法>と判決

「在特会 川東大了」に対する損害賠償請求裁判は、第四回の口頭弁論を終え、2514時に、奈良地方裁判所で判決があった
「原告が被った有形無形の被害は計り知れないものがある。水平社博物館の名誉を傷つけた事は公知の事実」と判決理由をのべ、在特会・川東大了の街宣活動、またそれをネット上に公開した行為を<違法>と断じ、150万の請求を科した。
裁判は、4回の口頭弁論が行われ、25日の判決を迎えたが、それまで毎回、差別街宣を糾弾し、裁判の勝利を願う奈良県民が傍聴券(約100名)を求めて結集した。
牧賢二裁判官の入廷で、裁判が開廷すると同時に、弁護団は、裁判官が新しく代わったばかりであり「差別街宣」の実態をビデオ確認した後で結審をして貰いたいと主張したが、裁判長は「今日の判決は変えない。その必要を認めない」と言明した時、傍聴席から「不当だ、なぜ見ないのだ」等の怒号が飛んだ。
しかし、牧賢二裁判長は次の様に判決した。
「水平社博物館前で、被告らが行った行為は、その行動自体が、博物館側の名誉を著しく傷つけた事は、公知の事実である。被告の言動は、水平社博物館の設立目的を否定し、場所、内容に鑑みれば、ビデオでのネット上での放映など原告が被った有形無形の被害は計り知れないものである、よって、川東大了被告に、本訴請求損害賠償金額は1000万円であるが、150万円の罰金を科す」と簡潔に論告した。
その瞬間、傍聴席から拍手が巻き起こった。判決後退廷した被告・川東は、記者團に、「控訴しない」と語った。「在特会」を追い詰めた一瞬だった。
判決終了後、傍聴に参加できなかった人を含む150名余の支援者が、裁判所横の商工会館に集まり、「1.22差別街宣裁判闘争 第5回口頭弁論総括集会」(実際には最終判決日となった)が持たれた。
吉川雅朗弁護団長は、「この判決の前まで、正直不安だった。しかし判決は次の2点を明確にした。'川東の行動が差別であること''水平社博物館の名誉を傷つけたこと'をはっきり認めた。虐げられた人々に勇気を与える判決だった。」
「判決文言は、"川東の言動により、水平社博物館が被った有形無形の被害は計り知れない''と断定し、博物館と言う場所、彼等がインターネットで流した街宣内容の事実から、判決が、彼等の行為が人権侵害に当たる事を
「公知の事実」と前提した事は高く評価できる。我々は勝利した。つまり、お前のやった事は不当であるのは当たり前だ。常識である。お前のやった事は差別であり人権侵害だ。だから賠償金額を支払えと言うシンプルなインパクトな判決だ」と述べた。
部落解放同盟奈良県連川口委員長(公益財団法人 奈良人権文化財団代表理事)は、「本来は、賠償を求める裁判ではない。請求満額は関係ない。差別と言う行為を裁く戦いである。ヘイトクライムを裁く戦いである。外国では刑事罰だ。日本にはそれがない。水平社が創立90周年を迎える中で、「人権侵害救済法」の制定を実現しなければならない。これは部落だけの法律ではない。朝鮮人差別をはじめ人間差別の問題である。」と指摘した。
連帯労組奈良ブロック代表は「勝利は確信していた。これからも差別と権利侵害と戦っていく」とのべた。
部落解放同盟京都府連代表は、「在特会による、京都朝鮮第一初級学校への襲撃事件は、これと同じ裁判である。この勝利は、我々を勇気づけるものだ。京都の裁判に良い影響を与える。京都の裁判での被告の中に、この川東大了も入っている。頑張ってゆきたい」と語った。                (柴野貞夫)


<参考サイト>

35日、「<高校教育無償化>からの、朝鮮学校外しを許さない、京都同胞緊急集会」が開かれた(2010年3月9日) 

「朝鮮学校への攻撃を許さない 328 円山集会」 (2010年3月29日)

☆排外主義的暴力集団「在特会」による京都朝鮮第一初級学校への白昼テロ(12月4日)を糾弾する(2009年12月26日)


(
裁判資料)

                    原告の請求認容判決に対する見解

本日、奈良地方裁判所は、原告の請求を認め、被告の不当な差別街宣を違法であると認定した。
我々は、この判決が、正しく差別街宣の違法性を認めた事を高く評価する。
我々は、被告及び被告の所属する団体が、本判決を真摯に受け止め、被差別部落出身者に対するもののみでなく、あらゆる差別を表明・助長・扇動するような不当な宣伝行為を直ちに中止するよう求める。
我々は、不当な差別助長行為を繰り返す者らに対する糾弾を今後も継続する事を表明する。
                                                2012625

                                      公益財団法人 奈良人権文化財団
                                       (旧名称 財団法人水平社博物館)
                                                  代表理事    川口正志
                                               弁護団弁護士    古川雅朗
                                                   同        内橋裕和