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(民衆闘争報道 「京都地裁は、在特会による朝鮮人学校襲撃事件を断罪した」 2013108日)



         京都地裁、在特会による朝鮮人学校襲撃事件を断罪



京都地裁は、在特会による朝鮮人学校襲撃事件に対し、
「在日朝鮮人と言う民族的出身に基づく排除であって、在日朝鮮人の平等の立場での人権、および基本的自由の享有を妨げる目的を有するものと言える」と厳しく断罪し、1226万円の損害賠償を求刑した。同時に、新たに移転した朝鮮学校に対する、在特街宣の<差し止め>を決定した


▲上 107日午前10時 京都地方裁判所での最終結審に向かう弁護団と原告 (写真出処 柴野貞夫時事問題研究会)

 

2009124日、午後110分ごろ、「京都朝鮮第一初級学校」(京都市南区)校門前に集結した極右・民族差別・排外主義集団である「在特会」のメンバー11名が、日の丸を押したて、道路を隔てた公園から、学校が使用しているサッカーゴウルポストや朝礼台などを破壊・撤去し、一部朝礼台や、引きちぎった放送施設を校門にぶっつけ、閉じられた校門の鉄扉をゆすりながら、はしごに登り校門に取り付き、学校に向かって大音量の拡声器で罵声を浴びせ、構内へなだれ込もうとした。彼らは、「市有地である公園を、朝鮮学校が、学校の運動場として不法に占拠している。公園内の備品施設を撤去しないなら我々がする。こんな不法行為をする朝鮮学校は北朝鮮に帰れ」と、まくしたてた。

彼ら排外主義暴力集団は、日本国憲法が保障する人権の尊重、国籍民族の違いなく教育を受ける権利、特に日本に永住する民族の子弟が、母国語とその文化を自由に学ぶ権利と機会の保障、そして何よりも、人間としての尊厳を土足で踏みにじる罵詈雑言を、日の丸で包まれたその薄汚い口から(「在特会」は、日本軍国主義とアジア侵略正当化の象徴として絶えず日の丸を持ち歩いている)学校と児童生徒に浴びせたのだ。

「朝鮮人出て行け」「北朝鮮のスパイ養成機関、朝鮮人学校を日本から叩き出せ」など、民族差別を煽り、事実無根のデマを浴びせながら門扉をよじ登りゆすりながら、子供たちを威嚇した。白昼公然たる、暴力と威力をともなった強迫行為である。」(20091226日付柴野貞夫時事研民衆闘争報道から)

在特ファシスト集団は、そのごも2回にわたって、襲撃街宣を繰り返した。

これに対し、朝鮮学校運営主体の京都朝鮮学園は、「在日特権を許さない会(在特会)」の関係者9人を特定し告発、3年間19回にわたる公判のあと、107日結審となり、京都朝鮮学園並びに朝鮮学校父兄たち原告団の全面勝利となった。橋詰均裁判長は、在特の襲撃街宣を、“我が国は、人種撤廃条約の責務に基づき、被告を罰する”と異例の高額賠償金を科した。

判決は、「在特会の一連の行動は、在日朝鮮人に対する差別意識を訴える意図があり、人種差別を扇動するものであって、人種差別撤廃条約に基づき処罰する」と、「人種差別行為に対する保護及び救済措置となるよう、賠償金額は高額とならざるを得ない」として、被告に1226万円の支払を命じ、同時に、朝鮮学校の新たな移転先での街宣行為の<差し止め>を決定した。
我々時事問題研究会は、この判決の内容と意義を、弁護団の判決報告から伝えていく

▲写真上 判決後報告集会にて、(写真出処 柴野貞夫時事問題研究会)

●“人種撤廃条約の責務に基づき、被告を罰すると裁判長

判決後の報告集会で、主任弁護士および共同代表弁護士の諸氏は、この判決を次の様に評価した。(
107日報告集会時点では、判決文の全体の最終分析は、進行中である。)
「判決の意義の大きさは、第一点に、日本が加盟する「人種差別撤廃条約」(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約 )が、日本の裁判所において大きな意味を持って解釈された点である。

人種差別なる行為が、無形損害を発生させており、民法709条により、加害者が被害者に損害賠償を命ずることが出来る。我が国は、人種撤廃条約の責務に基づき、被告を罰する”としている。判決の中にきちんと入れておく責務があるとしている。そして、同条約に適合する様に“無形損害に対し賠償額を設定する”と書かれている。民法709条規定を生かさなければならないとしているのだ。

●在特の街宣行為は、政治的主張等ではなく、単なる人種差別行為の扇動と断罪

二つ目の意味は、“朝鮮学校に対する様々な襲撃について、被告らはずっと、政治的主張であると強弁して来たが、被告らは本件で、朝鮮学校による「公園占有」と言う違法状態を解消するとの目的で活動して来たかの様に装っている。

それは表面的装いに過ぎない事は、(彼等が写した)映像自体から、容易に覗い知る事が出来る。公園占有がどうとか街宣のなかで言っているが、その本質的狙いは、人種差別行為を扇動すると言う目的にある”と断罪している。

この公園のサッカーゴールは、後2か月で撤去が決まっていたものであるが、(その事を)“街宣を行っていた西村ひとし等が知っていたにも拘わらず、朝鮮人を糾弾するかっこうのネタを見つけたと考え、自分達の活動を世間に訴える目的で活動を行った。”

即ち、裁判所判決はそのなかで、第一回目の襲撃が、朝鮮学校への言い掛かりに過ぎない事を認定している。これは裁判所が、事件の本質を正しく「人種差別行為の扇動に当たる」と判断しその様な価値観を持ったと言うことである。

●“本件示威行為と本件映像公開とは、密接不可分の加害行為であ不特定多数に対する名誉棄損と業務妨害による無形損害を日々増幅させるもの”と、在特のインターネット映像を断罪

更に第三点目は、差別街宣と朝鮮学校への襲撃を映像に取り続けた松本しゅういちの行為についても言及している。彼は、自らヘイトスピーチを行った訳でもないと本人が言っているが、彼についても厳しい判断を下している。

判決文77ページに“名誉棄損行為して見た時、本件示威行為と本件映像公開とは、密接不可分の加害行為であって、示威行為による名誉棄損と映像公開による名誉棄損を峻別して認定する事は困難である。また、本件映像公開は、インターネットを通じ、不特定多数に対し彼等の示威行動を開示し続けると言うもので、名誉棄損と業務妨害による無形損害を日々増幅させるもので、本件示威活動に密接に関係している。”と書かれている。従って、映像を公開しているに過ぎないと、言っている松本に対しても損害賠償請求が認められた。

判決において、「本件活動の不法行為性」の項目で、業務妨害になるかどうかの点につき、“狭い敷地の本件学校の校門前で、11人と言う大人数が、授業中ににも拘らず、拡声器を用いたり大声で怒号を上げるなど、しかも校庭の拡声器のコードを引きちぎり朝礼台を南門前まで運ぶと言う行為は、児童や教職員をはじめとする本件学校関係者を、強く脅えさせるものであった。”

“低学年の多くが恐怖のあまり泣き出し、児童の安全確保のため、児童の下校時間が1時間遅れた。”

この2009124日の在特による襲撃事件は、裁判所によって特に悪質な業務妨害行為として糾弾され計500万円が科せられたが、そのご2回にわたる襲撃に対しても、700万以上が科せられた。2回目の襲撃については、休校状態にもかかわらず、(仮処分命令を、在特が無視したこともあり)有形損害にも当たらないと考えられるが、300万の賠償を認めたのは、度重なる不法行為を裁判所が厳しく断罪したためだ。

在特街宣は、“在日朝鮮人と言う民族的出身に基づく排除であって、在日朝鮮人の平等の立場での人権、および基本的自由の享有を妨げる目的を有するもの”と、人種差別発言を法によって取り締まる事を明らかにした

判決は、在特街宣に於ける人種差別的発言を詳しく列挙し、“そのような発言はいずれも、在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図の下、在日朝鮮人に対する差別的発言を折り混ぜてなされたものであり、在日朝鮮人と言う民族的出身に基づく排除であって、在日朝鮮人の平等の立場での人権、および基本的自由の享有を妨げる目的を有するものと言える。従って全体として、「条約11項所定の人種差別に該当する違法性を帯びている。”と判決しているのは、今日、日本で人種差別法がない中、この項目は極めて明確に、在特の違法性を示しているものであり、今後彼等に対する戦いにとって有効な力となるものである。

●在特メンバーの不法行為に対し在特の<組織としての当事者能力>を認定した

在特の当事者能力についての言及では、彼等在特が「我々は、ファンクラブであって、団体として行動はしていない。何となく個々人の判断で行動している。会として一体となり、誰かが指揮命令をしているわけではないと主張した」事に対し、会則があり、構成員の資格が決められ、会としての財産があり、意思決定を会として行っている。役員、会長が子分に指示をしている事実も判決で触れられている。“会長の桜井が直接指示を出すこともあり、在特メンバーとして相応しくない者について除名その他を取り決める事もある。また本件事案において、組織として各メンバーに指示を与えていた事実も認定している。”と、不法行為の使用者責任も判決は肯定している。

 

▲写真上 判決報告集会にて、(写真出処 柴野貞夫時事問題研究会)

弁護団は、これら判決結果を総括して次の様に指摘した。“判決には、「民族的教育権」を攻撃し、侵害している事実への言及がなかったが、「人種差別」はいけないと言う事と、「民族差別」はいけないと言う事は、ものごとの裏表でもある。つまり同じ事を言っている、これは次の足掛かりである”

「今迄日本各地で繰り返されて来た、在特の差別街宣・ヘルトクライム、ヘルとスピーチを法によって断罪する集大成のような判決だとかんがえる。過去になかった踏み込んだ判決であり、歴史の一頁を開いたことは間違いない。これを足掛かりとして、更なる戦いへ展開する可能性を秘めた判決である。

1200万を超える賠償金額は、無形損害賠償としては大きい金額である。裁判所が本件を非常に重大な事件として認めている証拠でもある。また、差し止めを認めたと言うこともそうである。差し止めは、街宣が行われた場所とか、危険が認められる所に認められる場合が多い。今回移転した新しい学校にたいしても差し止めを認めたと言うことが、彼等在特から子供達を守ろうと言う裁判所の決意が現われている。

私たち弁護団は、この裁判で二つの重要な目的と視点をもって戦ってきた。その一つが、朝鮮学校に於ける民族教育権を守り、その侵害を糾弾することであり、もうひとつが、民族排外主義とレイシズムを断罪することである。この二つは、コインの表と裏のように一体的なものだ。在特の攻撃は、学校一般への攻撃でなく、朝鮮学校と言う民族教育の場を狙い、民族排外主義を利用してその教育権を攻撃しているのである。我々はこの裁判において、そのことを訴えてきた。

弁護団自身、朝鮮学校に何度も足を運び、何回も聞き取りを行い、民族教育の大切さを学ぶ過程でもあった。それでやっと、分かってきたと言う部分もある。自分達自身を振りかえっても、自分自身も日本の学校教育で「民族教育」を受けてきたと言う事に気がついたと言える。今日の日本では、民族的教育権が独自の価値を認められていない。朝鮮人と言う言葉が差別的意味に用いられない様な、美しい言葉として用いられる様に教わる様な、そう言う教育を公判において主張してきた。

その意味では、今回の判決には「民族教育権」への言及がなかったのは残念な思いがする。在特の人種差別行為の違法性を断罪したが、彼等在特の行為が、朝鮮民族の「民族的教育権」を攻撃し、侵害している事実への言及がなかったと言う点だ。

しかし、民族教育についての判断がしていない判決であるのは事実であるが、「人種差別」はいけないと言う事と、「民族差別」はいけないと言う事は、ものごとの裏表でもある。つまり同じ事を言っている。裁判所の判決が、片方を認め、もう一方を認めないのはあり得ない。私達は、プラスに受け取る事が出来ると考える。つまり、差別の問題は、ほったらかしてはいけないと。アイデンティティーの問題は大事だと言うのは、その為にこそ、条件が作られたと、そこから引き出し、足掛かりとする事で、民族教育問題についても、自から明らかになると考える。

最後に、弁護団は、つぎの様に締めくくった。長期間の公判中、いつも傍聴席を埋め尽くして、全国から支援を寄せて下さった人々の力が、われわれに勝利判決を生みだしました。裁判所は、皆さん支援者の姿を無視することは出来なかったと思います。戦いはこれからです。判決を武器に生かす戦い、そして在特による控訴もあるかもしれません。今後も皆さんとともに頑張って行きたいと思います。”

 

<参考サイト>

排外主義的暴力集団「在特会」による京都朝鮮第一初級学校への白昼テロ(12月4日)を糾弾する(2009年12月26日)


「朝鮮学校への攻撃を許さない 328 円山集会」 (2010329日)

民衆闘争報道 「在特会の水平社博物館差別街宣に対する裁判闘争」(2012年6月26日)