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社会主義の展望シリーズ 第8弾



(韓国労働解放実践連帯―「社会主義綱領を討論しよう」より

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韓国社会主義労働者党・綱領草案―その3(完)

 




1988年11月13日(韓国はまだ当時、ノ・テウ軍事政権下であるー訳注)、延世大・露天劇場で開かれた全国労働者大会から出発した示威隊列。血で書いた「労働解放」、「労働法改正」の幕が見える。

 

 

 

 

[U]

 

 

韓国社会主義者達は、全世界の社会主義者達とまったく同じように、社会主義革命を通して,階級の解放、人間の解放を実現しようとする究極的な目標を共有する。この様な共同の究極的目標を実現する道で、韓国社会主義者達は韓国社会の特殊な条件を考慮し、自身の課題を、より具体化しなければならない。

 

韓国社会で、資本の集積と集中は既に高度に進行され、韓国資本主義は典型的な独占資本主義の様相を見せており、これに依って、生産の社会的性格と私的所有の間の矛盾は、ますます更に深化されている。

90年代中盤、典型的な過剰生産、過剰資本の恐慌危機を迎えた韓国資本主義は、IMFから国際金融を受ける破産状態に落ち入ったのであり、この危機から脱出する為に、以後資本は新自由攻勢を一層強化した。

 

新自由主義攻勢は、剰余価値率、搾取率を高め、資本の集中過程の中で生き残った独占資本たちの利潤率を、IMF以前の水準に再び高くし、絶対的貧困、相対的貧困を深化させ、新しい形態の過剰生産、過剰資本の様相を作り出した。

 

慢性化された内需不振は、過剰生産の別の表現であり、新しい投機対象を探して徘徊する莫大な浮動資本もまた、過剰資本の別の表現であるだけだ。結局、新自由主義攻勢は危機を新しい形態で拡大再生産している。

 

事態がこの様であっても、資本は命懸けで、新自由主義攻勢の強化を通して新しい危機を突破しようとしており、其の綜合版が韓―米FTAの締結だ。

韓―米FTAを通して資本と資本家政権が狙う目標は、競争の強化を通じて新自由主義構造調整を一段階さらに上昇させ、米国独占資本の下位パートナーとして、アジア帝国主義の道、即ち、米帝国主義資本に従属的に協助しながら、自らも帝国主義を強化する道に進もうとする、ものだ。

 

しかし、この様に資本が、新しい危機を突破する為に強化している新自由主義攻勢は、過去10年の経験が立証する様に、危機を尚一層増幅させ、絶対的、相対的貧困の深化、資本主義的両極化の深化、階級間の教育費格差の拡大と貧乏の世襲化現象など、労働者・民衆の人生(いのち)を尚一層破綻させる事が明らかだ。

 

この過程で少数の独占資本は、超国家的帝国主義独占資本と連合し、資本蓄積に拍車を加え、労働者階級の一部と彼らの機会主義的指導部を、超過利潤で買収・包摂(抱き込む)するが、社会の多数を成す労働者、民衆の人生は尚一層悲惨となるのであり、資本主義的両極化は更に深化されるのだ。

 

この様に、資本主義的矛盾がいよいよ深化されて、労働者・民衆の人生(いのち)の苦痛がますます耐えがたい状況に至っている時期に、(仮称)韓国社会主義労働者党の当面の任務は、労働者、民衆に、この苦痛から抜け出す事が出来る道は、社会主義以外に無い事を明確に提示し、労働者、民衆の権利を最もよく保障する政治体制の為に戦うのだ。

 

 

(仮称)韓国社会主義労働者党は、社会主義革命段階に踏み込んだ韓国社会で、人為的に革命の段階などを設定しようとする段階論と、労働者、民衆の視線を社会主義から他の所に向けようとする民族主義、社民主義、清算主義など、あらゆる機会主義を排撃し、次のように要求する。

 

 

1)  全ての公職者は、民衆が選出し、選出者達多数の決定に依って何時でも召還する。

 

2)  全ての公職者の特権を廃止し、全ての公職者は労働者の平均賃金を越えない給料を受ける。

 

3)  常備軍を廃止し、これを、武装した民衆、民衆の民兵に置き換える。

 

 

 

4)   立法と執行の議会主義的分離でない、この統一を実現し、国家運営への労働者、民衆の直接的な参加を絶える事無く拡大していく。

 

5)  民衆による直接立法権と直接刑事訴追権を導入する。

 

6)   民衆による直接立法権と、直接刑事訴追権を導入する。

 

7)   あらゆる領域で例外なく(裁判所、検察、警察等)徹底した地方自治制を実施する。上級単位からの任命を禁止する。徹底した地方自治制の実現の為に、税金収入のより多い部分を地方自治体に良心、言論、出版、集会、結社、ストライキの制約を受けない自由。

 

8)  性、信条、人種、国籍に関係ない全ての民衆の平等な権利。

 

9)銀行と独占資本の没収、社会化、労働者統制の実施、企業の運営と関連した経営情報の完全な公開。

 

10)公共部門の私有化の中止、公共部門で労働者統制と社会的統制の実施、企業の運営と関連した経営情報の完全な公開。

 

11)全ての間接税の廃止と、所得と相続での累進税の確立。

 

12)全ての土地は国有化する。農民の所有土地と小規模生活的な土地所有を除外した全ゆる土地は、無償で没収する。

 

13)大規模農業生産単位は、最善の技術的支援を受ける模範国営農場に転換する。

 

14)小農と中農は、ひたすら模範と説得の方式によって、更に実質的な支援を通して、漸次的に協同組合に組織する。

 

15)無分別な農産物輸入開放を中断し、食料自給率を高め、農業の生態的側面を積極的に考慮する。

 

16)幼児から大学教育に至るまで、国家の費用による無償教育を実施する。全ての学生達は、国家の費用で、食事と衣服、学用品、住居費を提供されなければならない。教育と生産活動を密接に統合させる。

 

17)公教育は、民主的に選出された地方自治機関によって管理されなければならない。好ましくない教師を解任する権利を持つ住民達が、直接教師を選出する。

 

18)出産と医薬品を含んだ医療サービスは、国家の費用によって無償で提供する。全ての民衆の健康推進の為に、大規模に無料体育施設と空間を作らなければならない。

 

19)土地国有化と同時に、1家族1住宅を超過して所有する住宅は、没収する。没収された住宅は、家のない労働者、民衆に優先提供する。

 

20)米帝国主義の支配と干渉を排除して、民族自決権を完全に確保する。

 

21)労働者、民衆を搾取抑圧する南韓の資本主義と、労働者、民衆を資本主義とは異なる形態で搾取(訳者注・下記@)抑圧するスターリン主義的北韓体制に反対し、民主的な社会主義体制への統一を実現する。この為に、南北社会の変革を遂行する過程で、両体制の変化発展と接近を前提に、民主的な社会主義体制への発展指向性を持つ連邦制を過渡的に実施する。

 

22)女性に対する一切の不平等と抑圧を廃止し、全ての社会過程に女性が参加する事が出来る平等な機会を提供する。全ての社会過程に女性が実際に参加できるように、家事労働を社会化する。家父長的構造を克服し、妊娠自決権に対する女性の権利を保障し、多様な同居形態を認定する。

 

23)青少年達に対する全ての社会的抑圧を撤廃し、青少年達に潜在力を発揮できる様にする公教育と、訓練の十分な機会を提供し、進取性を発揮出来るようにする、知的文化的発展機会と働く場所を提供する。

 

24) 高齢化社会の進行によって、人口構成の比重が増加している老年層の社会的保護を実施するだけでなく、老年層の技術、能力、創造的潜在力を鼓舞し、積極活用する。

 

25)障害者に対する、全ての差別と偏見を一掃し、障害者が平等な位置で社会的な人生に参加する事が出来る機会と物質的、文化的、支援を提供する。

 

26)自然に対する人間の態度で、革命的な変化が生まれなければならない。人間と自然の関係は、収奪の関係ではなく、人間が自然全体と共存する関係とならなければならない。‘更に多く消費する事’、‘そのために更に多く労働し,生産する事’が人生の目標ではなく、人間間の疎通と連帯の豊富化、自然である人間が自然と有機的に統一され、共存する事が人生の目標となる文化革命が生まれなければならない。

 

人類の持続可能性を確保する為に、次の世代の人生を保障する為に、既存の生産様式と人生の様式を、親生態的な構造に再組織する。

一酸化炭素の排出量を2020年までに、1990年対比40%削減する。

化石燃料、核燃料など再生不可能な燃料の消費を画期的に減縮し、太陽力、風力など、再生可能なエネルギー使用に転換していく。意識の革命的な転換を成し遂げる為に親生態教育を義務化する。

 

 

資本の搾取と抑圧による肉体的、道徳的堕落から労働階級を保護し、解放の為の労働階級の能力を発展させる為に、党は要求する。

 

 

全ての賃金労働者に、一日六時間労働を実施し、漸次的に労働時間を減少させる。

 

 

1)  障害者、青少年(18歳以上20歳未満)、妊産婦、育児女性には、一日労働時間を四時間に制限する。

2)  該当産業、又企業の労働者で構成された組織で選定する、健康に有害で危険な労働の場合は、一日四時間労働を実施する。

3)  全ての賃金労働者に、週あたり連続三日の休日を実施し、公休日を除外した、一年に四十五日以上の有給休暇を実施する。

4)   全ての産業での、残業、休日労働、夜間労働、連続的な交代勤                      務制を廃止する。夜間労働また連続的な交代勤務制が必ず必要な産業である場合、該当産業また企業の労働者で構成された組織で、労働時間と労働条件を工夫する。

5)  18歳未満の青少年の場合、あらゆる産業での労働を禁止する。障害者、青少年(18歳以上―20歳未満)、妊産婦、育児女性の場合危険で、健康に有害な全ての産業での労働を禁止する。

6)  すべての労働者に、同一労働同一賃金を支給する。

7)  臨時的、契約的、派遣的など、あらゆる形態の非正規職雇用を禁止し、完全雇用を実施する。

 

この為に、国家は、全ての社会構成員に労働が出来るよう、教育と職場を提供する。

 

 

8)  女性の健康に有害な、あらゆる産業での女性の労働を禁止し、女性は出産前三ヶ月、出産後三ヶ月の有給休暇と、父母合算二年の育児休職を有給で実施する。出産前後の休暇、育児休職期間には通常賃金を支給する。

10)女性が働く全ての企業と工場は、幼児と児童の為の授乳施設、託児施設と人員を置く。託児女性と妊産婦には、二時間毎に一時間以上の有給休職時間を与える。

11)全ての労働者に、疾病、傷害、職業病、出産、死亡、医療、失業、産業災害、老後―を備えた、社会保障制度を実施し、孤児、一人父母家庭、障害者、青少年家庭、未婚母、独居老人等、社会の全構成員に拡大する。この為の全ての施設と基金は国家と資本家が負担し、労働者で構成された機構で運営される。

12)産業災害の完璧な予防と再活のために全ての産業、また作業場には、該当産業また作業場の労働組織によって選出された、労働者と専門家で構成された産業災害の予防と再活のための全国的単位また該当作業場内の機構を構成する。労働組織によって選出された産業安全監督官を置く。

  産業安全監督官の判断によって、労働者は作業を拒否する事が出来る権利を持つ。

 

13)あらゆる産業と企業で、労働者の命と健康を保護し労働条件、労働環境、衛生などを改善し監督する事が出来る、労働組織によって選出された労働監督官制度を実施する。

14)あらゆる企業と作業場で、労働者の健康な文化と肉体的健康のために、労働組織また労働者達と該当分野の専門家で構成された機構を設置運用する。

15)すべての移住労働者は、韓国労働者と同一の権利を持つ。

16)労働問題と労働者達の特殊な事件を扱う労働法院を設置する。

 

 

 

[V]

 

 

韓国社会主義労働者党の創党は、韓国の社会主義者達が、長い期間持続された社会主義運動の歴史的後退に終止符を打ち、全世界の社会主義者達と労働者階級とともに、資本主義に対する大反撃の道へ乗り出すと言う、この為に組織的に戦列を整備すると言う宣言だ。

 

資本主義は、人類が成し遂げた偉大な成果を、人類の自由な発展の為の手段ではなく、搾取と抑圧を強化する為の手段にしてしまう事で、人間性を大規模に乱暴に破壊し、人類を破滅の道に追い込んでいる。資本主義社会で最も低く評価され、最も多く浪費されて破壊されているものは他でもなく人間であり、人類は20世紀初盤以来、一層増幅される野蛮の犠牲となって来た。

 

社会主義か野蛮か、社会主義か資本主義かの問題は、人類生存の問題として、韓国社会主義労働者党は、人間らしい人生の確保と野蛮からの解放は社会主義への前進を通じてのみ可能だと言う事を明らかにした口調で宣言し、社会主義を実現する為に闘争するだろう。

 

韓国社会主義労働者党は、甲午農民戦争、民族解放闘争、独裁政権に立ち向かった民主主義闘争の革命的伝統を継承し、これを社会主義のための闘争過程で発展させて行くだろう。

 

韓国社会主義労働者党は、国際的な社会主義運動と労働者階級解放運動の成果を完全に継承する事と同時に、社会主義運動の過程で発生した歴史的な誤謬とは、断固として断絶するだろう。

 

韓国社会主義労働者党は、機会主義的な清算主義と歴史的誤謬に対する弁護論的擁護の全てを排撃する。

 

韓国社会主義労働者党は、自身が全世界の労働者階級の一部隊、全世界の社会主義者達の一部分と言う事を、もう一度反芻するだけでなく、新しいインターナショナルの創立の為に積極的に闘争して行く覚悟を明らかにし、全世界の労働者階級に訴える。

 

 

全世界の労働者階級よ、団結せよ!        (完)

 

 

(訳 柴野貞夫 2009年12月25日)

 

 

[訳者注@]

 

「綱領草案」の著者は、21)項で、「資本主義とは異なる形態で」と付け加えているにしても、北韓の政治体制を「搾取抑圧するスターリン主義的体制」と規定している。しかし、これは必ずしも正しい表現ではない。労働者国家の「官僚」は、資本主義的生産関係に依拠した独立した階級(資本家階級)ではもちろんなく、従って賃労働が生み出す「剰余価値」を搾取しているのではない。官僚の社会的基盤はプロレタリアートに他ならない。生産手段の社会的所有に根を置いた労働者階級に寄生する階層に他ならない。「搾取」と言う概念は当たらない。これは「実践連帯」が自ら否定する、スターリン主義的国家に対する「国家資本主義論」を肯定することになる。我々は、ソ連・東欧と今日の労働者国家を含め、所有と生産と分配関係において、労働者民主主義を歪めた「堕落した労働者国家」であると規定しても、依然として労働者階級の過渡的国家であると考える。この国家は、世界の資本主義による侵略と攻撃から擁護すべき対象であっても、決して打倒すべき対象ではありえない。

 

トロツキーは、「ソビエト国家論」で次のように指摘している。

「それぞれの階級は、独自の所有形態を作り上げる。しかし官僚は、生産や分配過程において独立した立場を持たない。どのような独立の根も持たない。官僚の機能は、基本的には階級的支配の為の政治的技術に関係したものだ。・・官僚は経済的に支配的階級と不可分に結びついており、其の階級の社会的根の上で自らを養い、自らを其の階級とともに維持し、それと共に倒壊する。」「あらゆる体制において、官僚は剰余価値の少なからぬ部分をむさぼるが、・・それを、我々は用語の科学的意味において、階級的搾取として取り扱うべきではない。社会的寄生として扱うべきである。」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第6段 (韓国・労働解放実践連帯―「社会主義綱領を討論しよう」より) 2009年12月14日更新

第7段 (韓国・労働解放実践連帯―「社会主義綱領を討論しよう」より その2) 2009年12月19日更新


○社会主義革命の展望シリーズ

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