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(韓国民衆言論  オーマイニュース 2014812日付)http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002022409

 

        日本の<慰安婦案内板>をこっそり撤去した理由
日本の過去歴史の否定が、地方政府(自治体)に拡散している
天理市が朝鮮人強制動員案内板を撤去

 

 

<寄稿> 川瀬俊治

 

<編集者記>

 

「日本政府の‘日本軍慰安婦’問題への対応を、国際社会が一つとなって非難の声をあげている中で、日本では地方政府(自治体)まで乗り出して、過去史の隠蔽をしている。

日本の奈良県天理市当局が、去る4月中旬頃、市立公園に建てられていた日帝強占期の強制動員の歴史を説明した案内板を、密かに撤去したことも、この様な事例の一つだ。

この案内板は、太平洋戦争末期、飛行場建設に強制動員され、悲惨な環境のなかで酷い苦痛を経験した朝鮮人労働者と、‘慰安婦’の犠牲を広く知って貰う為に、1995年、日本の市民社会と天理市、そして教育委員会が、思いを集めて一緒に建てた。

日本のジャーナリスト兼市民運動家・川瀬俊治氏が、次第に勢いを拡大している修正主義歴史観を懸念しながら、どんな、事前の協議もなく、突然案内板を撤去してしまった天理市当局の理解出来ない行動を一つ一つ批判する文を韓国の民族問題研究所に送ってきた。

民族問題研究所は、この事件を、最近日本全域で繰り広げられる侵略戦争の美化と、戦争犯罪の痕跡消去の一環として報告、わが社会に警鐘を鳴らす為に全文を翻訳し、事件の概要と経緯を紹介しようと思う。

川瀬俊治氏は、集団的自衛権反対運動と原発反対運動など、いろんな社会運動の先頭に立っている。民族問題研究所が発刊を推進している‘在日朝鮮人団体辞典’の執筆委員でもある。」


<本文>


● 3千余名の朝鮮人男性を強制動員した‘柳本飛行場’建設現場

太平洋戦争末期、日本の奈良県・天理市には、‘柳本飛行場’建設工事に強制で動員された朝鮮人男性達と、日本軍‘慰安婦’として引っ張ってこられた女性達が居た。

‘柳本飛行場’は、日本海軍の施設である。第2次世界大戦中、日本が本土で決戦する事に対備して2年余の間工事し、敗亡直前に完成された。日帝はこの飛行場建設工事に、3千余名の朝鮮人男性を強制で動員した。また、軍の管轄地内には、朝鮮から引っ張ってきた女性、約20名が、日本軍‘慰安婦’として酷使された‘慰安所’が設置されていた。

● 天理市に20年間あった、朝鮮人強制動員案内板・・・4月の或る日、密かに撤去される

こんな、慙愧に耐えない歴史を後世に知らせる為に、1995年天理市に暮らす市民と歴史学者、社会運動家達は、力を集めた。日本の市民社会は、天理市と市教育委員会と共に、朝鮮人強制動員の歴史を記述した案内板を作って、市立公園にこれを建てた。しかし今年4月に、天理市は突然この案内板を撤去した。20余年間も建てて置かれたこの案内板を、どんな説明もなく撤去したのだ。

“どうして撤去したのか”と問うと、天理市は“案内板に対し、抗議するメールを何通か受けた。”と答弁した。市当局に来た請願メールに“(朝鮮人を強制動員した歴史は)汚辱の歴史だ”、“確認する事が出来ない事実を書いていた”と言う意見が書かれていたと言うのが理由だった。天理市当局は“案内板に書かれた内容は、市当局の公式見解ではない”と語った。

これに対し、奈良県の市民運動団体らは、“市当局が歴史を隠蔽した”と糾弾しながら、案内板を元のまま復旧し、市立公園に再び建てよと要求している。去る7月には、天理市の過去史隠蔽を糾弾し、歴史の真実を明らかにする様に要求する抗議集会も開催した。

朝鮮人を強制動員した歴史を紹介する案内板を、日本の地方自治体が直接乗り出して設置した事例は、極めて稀だ。特に日本軍‘慰安婦’として日本に引っ張ってきた朝鮮人女性被害者に対する歴史を記録した案内板は、ただ天理市にだけあった。

この案内板を見る為に、1995年から今まで、日本全国各地から多くの市民と学生達が天理市の現地を訪問した。また、天理市に住む住民や歴史家が観光客に、朝鮮人を動員した日本の加害の歴史を説明したり、土地を案内する時も、助けとなった。日本が韓国を植民地として支配した日本の歴史を、直視する様にするのに、大きな役割を担って来たと言う事が出来る。

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▲写真上 撤去する前の柳本飛行場建設工事・朝鮮人強制動員案内板(出処―民族問題研究所)

● 柳本飛行場は、どんな場所だったのか?軍が管理し、企業が運営に関与した、柳本飛行場慰安所

この飛行場は、日本軍旧海軍である‘大和海軍航空隊’の基地だったが、太平洋戦争時、大阪海軍施設部が<大林組>に工事を発注し19439月から飛行場の工事をした。

日本が敗戦する直前までに、1500mに至る滑走路をならした。飛行場の正式名称は、‘大和海軍航空隊大和基地’であったが、日本では一般的に所在地の地名を取って柳本飛行場と呼んでいる。

日本軍は戦争当時、この飛行場建設工事に、勤労奉仕と言う名目で天理市に住んでいた日本人学生と住民を動員し、労働力が不足するや、朝鮮人まで強制動員した。その上、キョンサンナムド(慶尚南道)の朝鮮人女性を動員し、大和海軍の管理区域内に設置した慰安所に閉じ込めて置き、‘性奴隷’にした。

朝鮮人男性と女性達は、逃げる気力さえ出すことが出来なかった。

日本が敗戦した後、海軍と大林組は、その上朝鮮人男性達を大阪から列車に乗せ、プサン(釜山)への連絡船がある下関まで送ったが、慰安婦にされた朝鮮人女性達はそのまま放置された。
日本軍慰安所は、‘軍慰安所’と‘企業慰安所’に、大きく二種類に分ける事が出来るが、柳本飛行場にあった慰安所は‘企業慰安所’の性格を持っていた。軍が管理し、企業が運営に関与したものである。しかし、‘企業慰安所’と言っても、海軍の命令に従い慰安所を設置し運営をしたのであるから、直接的加害主体は軍と言う事が出来る。最も注視しなければならない部分は、強制性と人権蹂躙などの反人道的戦争犯罪であって、運営主体がどこなのかは2次的問題だ。

    柳本飛行場慰安所の実情・・・被害者五名の証言で明らかになる

しかし、文献資料が一切残っておらず、その間、柳本飛行場にあった慰安所の実情については、全く知る事ができなかった。そうする内に、強制動員被害者達の中で五名が証言し、初めて世上に明らかとなった。

当時、‘慰安婦’として引っ張ってこられた女性は、20名強だったが、極限状態で軍事用メチールアルコールを飲み、空腹を耐えたと伝えた。これに、近所に住む在日朝鮮人男性がこの消息を聞き、女性達を救出し自分が住む村に、約1年間隠してやったと言う。その内1名は、結局、病に罹り死亡したが、この在日朝鮮人が息絶えた女性の故郷、キョンサンナムド(慶尚南道)のトンヨン(統営−訳注・現在の統営市)に、遺骨を送ったと言う。

この内容は、筆者が1970年代初半に、ジャーナリストとして仕事をする時、直接この在日朝鮮人をインタビューして聞いた事実である。

参考までに、トンヨン(統営)は、日本軍‘慰安婦’として引っ張って行かれた被害女性が、最も多い地域の一つとして知られている。

一方、強制動員された朝鮮人男性達が誰だったかは、今まで、全て明らかではなかった。日本が敗戦した後、軍が関連資料を燃やしたからだ。

しかし、1992年、偶然に、チュンチョンナムド・ノンサン(忠清南道・論山)に住む二人が、強制連行被害者と言う事実を知り、連絡を取ってその年の秋に、彼らが直接日本に渡って被害事実に対する証言を残した。

その後には、韓国政府が進めた強制動員被害者調査の結果を見て訪韓し、柳本飛行場建設工事強制動員被害者、4名をインタビューする事もした。

● 歴史的事実を隠蔽し、朝鮮人を強制動員した加害の歴史を否定した天理市長

その間、文献資料が消失する中でも、筆者を包む天理市に住む市民運動家、歴史学者達は、継続して被害者に会い、証言を整理し、歴史の空白を埋めようと努力して来た。この様に長期間調査を継続して来た成果を反映したものが、即ち案内版だったのである。

去る1995年、市立公園に案内板を設置した後、19年間、数多い市民と学生達がこの場所を訪問し、歴史学習、人権学習の場として活用して来た。

横×縦−80cmに過ぎない、小さな案内板であるが、その役割は極めて大きく貴重だったと考える。

突然の案内板撤去の知らせを聞いた日本の市民社会は、天理市にある地域の市民運動団体を中心に、‘柳本飛行場案内板撤去を考える集まり’を設け、市当局に案内板を元に戻して置けと要求した。また天理市市長に撤去の経緯を明らかにせよとの質疑書を送った。

そうすると、天理市は79日付答弁書で、“歴史認識が多様であるから、市の見解で強制性を明らかにする事は、不適当だ”とし、“日本政府が歴史研究をして検証するまで、待ちたい”とした。

一言で、朝鮮人を強制動員した加害の歴史を否定したのだ。歴史的な事実を隠蔽する背景が、一体全体何なのか?天理市当局に尋ねたい。

恐らく、天理市当局が案内板を撤去するのに決定的な影響を及ぼしたのは、安倍政権の方針である。2007年一次安倍政権は、“強制連行を直接示す(資料)の記述を発見する事は出来なかった。”とし、強制連行の事実を無視したのだ。

● 日本の時代的雰囲気に対抗し、民衆運動を粘り強く推進して行こう

朝鮮を始めとして、アジアを侵略し、戦争犯罪を犯した事実を隠蔽し様とする‘歴史修正主義’が、今は自治体にまで、強く伸びている。更には、“日本政府が歴史研究をして、検証する時まで、待ちたい”とした答弁を見る時、ファシズムが勢力を得ている現実を、懸念せざるを得ない。日本政府が、標榜する歴史観を、今地方自治体で贅言無く(従順に)そのまま、従おうと言うのが、現在の実情だ。日本の市民たちはこんな事態に直面しているのである。

今後、‘柳本飛行場案内板撤去を考える集まり’は、この様な日本の時代的雰囲気に対抗する民衆運動を粘り強く推進するものだ。アジアの民衆と ?????????????????????????? ???5/?? ??? ??12共にしながら、歴史の真実を必ず取り返す様にする。

この運動には、日本では‘奈良・発掘する会’、‘多文化共生フォーラム奈良’など、様々な50余の団体、韓国では民族問題研究所を含む‘韓日市民宣言実践協議会’が共にしている。韓国の意思ある市民たちが支持と声援を送って頂く事を期待する。

                                             (訳 柴野貞夫 2014814日)

 

<関連サイト>

 

論考「従軍慰安婦強制動員」の強制否定は、安倍政権の確信犯的行為である

世界を見る−世界の新聞/日本政府は、韓・日間の調整過程を一つ一つ暴きながら、‘慰安婦強制連行’を否定した(韓国・ハンギョレ 2014年6月20日付)

記録吉見義明教授の講演記録<その3>(日本軍「慰安婦」被害者証言キャンペーン2013 in 奈良  2013年5月26日)

記録吉見義明教授の講演記録<その2>(日本軍「慰安婦」被害者証言キャンペーン2013 in 奈良 2013年5月26日)

記録吉見義明教授の講演記録<その1>(日本軍「慰安婦」被害者証言キャンペーン2013 in 奈良 2013年5月26日)

362 日本極右派、米国新聞に「慰安婦」侮辱広告 (韓国ハンギョレ国際ニユース 2012年11月9日付)

☆357 安倍元日本総理「植民地支配謝罪談話見直し」と、また妄言(韓国・ハンギョレ2012年8月28日